清純の真実･前編《名探偵コナン》 (ページ5)

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𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟺 ページ5

.𝙷𝚊𝚒𝚋𝚊𝚛𝚊 𝚜𝚒𝚍𝚎

「出ないわね……」

もう何度目かになるコール音を耳にし、カウンターに携帯を置く。窓の外はもう暗くなっているのに。

先に博物館から戻ってきたはいいものの、組織がいるというのにあの探偵さんは何をやっているのやら。もしかして、何かあったのだろうか。組織に関係した何かが。一向に繋がらない電話に、若干の焦りを覚え始める。

「……新一のことなら大丈夫じゃろう」

その焦燥感が顔に出ていたのか、奥の部屋から出てきた博士にそう言われた。確かに、彼は数々のピンチをかわしてきたけれど組織絡みとなるとやっぱり不安。

カウンターに置かれた黒い液晶画面をじっと眺めていると、博士が手に持っていた何かを私に差し出した。

「それよりも……ほれ！解除できたぞ、パスワードがのォ」

それは既視感のあるクマのストラップが付いた携帯電話。どこかで見たような気がする。突然のことにパッと思い出せず、なんだったかしらと首を傾げた。

「パスワード……？」

「これこれ、忘れとるのか。前に言ってたじゃろ？Aさんの携帯のパスワードを開けてほしいと……」

あら、そういえばそうだったわね……

……思い出した。博物館に行く前の週──そう、彼女と吉田さんでショッピングモールに訪れたとき。彼女から開かずの携帯を開けて欲しいと頼まれたのだ。

「うそ………もう解除できたの？」

「ああ、昔の携帯はセキュリティ面においては、そこまで進歩していなかったからのォ……ちょちょっと弄ってしまえばこの通りじゃ！」

"ほれ"と博士が自慢げに携帯画面を見せる。その拍子に飾り気のない待ち受けが現れ、着信の文字がその下に表示された。

"もしもパスワードがわかって開けたら連絡先とかから思い出せるかもね"

そう言った彼女の言葉を思い出して、興味本位でメールボックスのボタンを押した。もしかしたら彼女の記憶を取り戻す手助けができるかもしれない。

………そう、思っていたのだ。
見覚えのあるメールアドレスを見つけるまでは。