清純の真実･前編《名探偵コナン》 (ページ37)

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𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹𝟼 ページ37

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しかしその何が気に食わなかったのか。
やや苛立ったような彼にチッと荒々しい舌打ちをされた。

そして結局、彼は私に向けて引き金を引かなかったのだ。

え………？

その他何を言うこともなく彼の足は玄関に向かっていた。あっさりと手を引いた彼に、戸惑い以外なにも感じなくて。その場にぽつんと残された私は、慌ててその後ろ姿を追いかけた。

「………人が小さくなるなんざ、御伽噺じゃあるまいし。どの道、あの女が生きてるとは思っちゃいねぇ」

彼は歩きながら独り言のようにブツブツと呟いていた。人が小さくなるってどういうことなの。あの女っていったい誰の話をしているの。私の頭には、彼の言葉に対して次々と疑問符が浮かぶばかりで。

「ね、ねぇ、急にどうして……！」

「今は放っておいてやる。ただ………あの方の命令である時は、誰であっても容赦しねぇ」

"わかったか"と鋭い凍てつくような視線をギロリと向けられる。つまり、今は手を引くけどまだみんなの身は安全圏にあるわけじゃないってことだ。

「わ、わかったよ、陣……」

「フン……命拾いしたと勘違いするなよ。お前の思い通りにさせたくねぇだけだ」

それだけ言い残すと、彼は玄関の扉を開けて出ていった。
だんだんと小さくなる足音に、私はペタリとその場に膝を着いた。

思い、通り……

室内で1人になった私はその言葉を繰り返した。つまり、私が彼に殺されてもいいと言ってしまったのが気に食わなかったのか。でも、これまたどうして。

とりあえず私は放心状態でベッドに体を預けた。たくさんの疑問の中で唯一ハッキリしたのは、私が警察を辞めても私たちの立場は変わらなかったということ。

「本当に、死ぬかと思ったぁ…………」

あの生温かいマズルの感覚が忘れられなくて、心臓はまだバクバクと早鐘を打っている。自然と今になって涙が溢れてきた。改めて、彼の冷酷非情さを身に染みて感じた日だった。
もうこんな事、二度と体験したくない。