清純の真実･前編《名探偵コナン》 (ページ35)

今日:28 hit、昨日:101 hit、合計:44,173 hit

𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹𝟺 ページ35

.

「馬鹿な事抜かすんじゃねぇぞ………」

次の瞬間、コツンと何かが私の額にあたった。

…………！！

あまりにも自然なその流れに視線だけ上に動かせば、そこにあったのは黒いマズル。すぐに理解した。自分が今、彼の愛銃──ベレッタの餌食になろうとしていることに。

「今言ったことをすぐ取り消した方がいいぜ………その脳天に楔を撃ち込まれたくなけりゃなァ」

今まで拳銃を向けられたことなんて1度たりともなくて、心拍が一気に上がった。額にあたる無機質な塊に、だんだんと息が上がってくる。どうやら私は彼の殺戮スイッチを入れてしまったみたい。彼に始末された人々の気持ちが痛いくらいにわかった。そんな気持ち、知りたくもなかったけど。

「それは無理……みんなを危険に晒すくらいなら、ここで殺された方がマシよ」

それでも、こんな脅しはある意味みんなの命がかかっている。私がここで首を縦に振ることなんてできない。職業柄ということもあったからか、警察を辞めた今でも謎に正義感は纏わりついていた。

カチャ……

私は自らまだ外されていなかったセーフティレバーを外した。これでもう彼が撃とうと思えばいつでも可能。
一瞬触れたマズルはやや熱を帯びていて、彼がここに来る前すでに1人が餌食となっていたことを理解した。

彼が私を殺すわけがないと侮っていたわけではない。こうして関わってる以上、いずれはこの時が来ると思っていた。
………それに、想い人の手で殺されるのも悪くは無い、なんて馬鹿げた考えも頭の片隅にあった。

でも、ここが墓場になるとは思わなかったな……

要望があるとすれば、華やかな死に花を咲かせたかったということぐらいだろうか。でも、もうそんな後悔をしている暇はない。
次に与えられるであろう衝撃に、私はグッと目を瞑った。