清純の真実･前編《名探偵コナン》 (ページ33)

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𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹𝟸 ページ33

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それから彼は携帯を取り出すと、画面に目を落としながら煙草に火をつけた。室内タバコは禁止だと言いたかったけど、言っても無駄なことは明白だったので止めた。
そして彼は一服すると、目線を画面に向けたまま私に疑問をぶつけた。

「………もし俺をひっ捕らえてたら、お前はどうしたんだ？」

彼が自身が捕まった後の話をするなんて珍しい。
なんだか話の流れが、私が警察を完全に辞めた方向になっている気がする。もしかしたらいずれ復帰するかもしれないことは黙っていよう。その時が来たら伝えればいいか。

「うーん……とりあえず刑が重くならない程度に善処するかしら」

「……馬鹿な奴だ。第一、こんなに人を消してるんだ……極刑は免れねぇ」

せっかく前向きに言ってあげたのに、彼は"ムショの中で執行日を待つだけだ"と言い放った。確かにここ日本では組織的な殺人罪という罪状があり、一般の殺人罪よりも加重される場合が多い。それを踏まえれば、彼にその判決が出ても何らおかしくはないだろう。
ただ、そんな刑法にも異例の場合がある。

「………1つだけあるよ、極刑を免れる方法」

私の言葉に、彼は表情を変えることなくただ煙を燻らせた。

「司法取引よ。陣がいるのは国際的に有名な犯罪組織だもの。少しの情報と引き換えに、懲役くらいには下がると思うけど」

「………言語道断とはこの事か。呆れて物が言えねぇ………俺が鼠になってどうする」

司法取引……それは被疑者が共犯者についての情報を提供することを条件に、本来課せられる刑を軽減してもらう制度。私が警察官だった時も何度かこの場面に遭遇した。
でも彼が今言ったみたいに、組織一途な彼が情報漏洩するなんてことはないだろう。しかもその立場は幹部。今の話は軽く聞き流してもらえればいいや。

そんな冗談めいた話をするより、私は彼の用件を聞くことにした。

「まぁ、そうよね……ところで今日は何の用があって来たの？さっき言ってたでしょう」

今度は私が尋ねると、彼は携帯を操作していた手を止めて、私の目の前に白く光る画面を見せた。

「あぁ……そう重要なことじゃねぇ。
………ただ、お前がこのガキを知ってるかってことの確認だ」

私の瞳にその画面が映った刹那、今までの生ぬるい話が嘘のように吹き飛んだ。