検索窓
今日:194 hit、昨日:101 hit、合計:44,339 hit

𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹 ページ4

.



それから、このアパートで5分、10分ほど居座ってから陣は立ち上がった。彼曰く、下で愛車と一緒にウォッカさんを待たせているのだと。それに、次の任務があるとかないとか。

別れの挨拶をすることもなく、彼はダンボールの山で狭くなった廊下を縫うように進んだ。ただでさえ体が大きい彼のことだから、少しフラついただけで箱が崩れそうだ。



「あ、そこ……足元に気をつけてね。ダンボールいっぱいあるから」

「……おい、気になっていたがこれは何だ?まるで越してきたばかりみたいに」

「警察が調べに来ると思ってたから置きっぱなしにしてたの。というのも、巷では私が死んだことになってるみたいでね」



"もう嫌になっちゃうよ"と眉を下げる。とりあえず警部と再会できたので私の死は撤回されるはず。いや、撤回してもらわないと困るのだけれど。
そんな私の話を聞いた彼は、特に驚くこともなくむしろ落ち着いているようだった。



「あぁ、そのことか」

「そ、そのことかって……!勝手に死んだことにされちゃってるのよ」



まあ、彼にとってはどうでもいいことなんだろうけども。何か期待していた訳ではないが、冷たい態度に少し肩を落としてしまった。
そんな彼は玄関まで辿り着くと、靴を履きながら淡々と言葉を投げかけた。



「………逆にこうは考えねぇのか?自分がお陀仏になったと思わせることで、敵の目を欺けるってな」

「えぇ?て、敵………?もしかして私、誰かに目をつけられてるの?」



気になってそう尋ねると、"さぁ……どうだかな"と口角を吊り上げる。彼がこの表情を浮かべたときはだいたい的を射ている。
まさか死の捏造に意味があるかもしれないなんて。そんなこと考えもしなかった。でも、彼の言うことが正しいと仮定したら、いったい誰が何のために私に目をつけているんだろう。何か恨まれるようなことをしてしまったんだろうか。


そんな不安を抱えてふと前を見ると、もうそこには陣の姿はなかった。考えている私を他所に、さっさと身を翻してしまったのだ。

𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟺→←𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟸



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (139 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
438人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 黒の組織 , ジン   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年7月29日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。