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𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟸𝟼 ページ27

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コンコン



応接室について扉を軽く叩く。
しばらくすると、中から警部の"入っていいぞ〜"と言う声がして、私は恐る恐るドアノブに手をかけた。


カチャ……



「し、失礼します……」



警察時代にも入ったことのなかった応接室は、重く厳かな雰囲気が漂っていた。
入ってすぐにある革張りのソファでは、すでに警部と見知らぬ男の人が座っていて。


誰だろう、あの人……


警部の隣に腰掛けている、隻眼で白髭を蓄えた男の人。失礼かもしれないけど、強面で物腰が柔らかそうには見えない。むしろ、ちょっと怖いくらいだ。
私がその場に立ち尽くしていれば、警部にちょいちょいと手招された。



「Aくん!記憶が戻って何よりだ。まぁそんなところで立っていないで座りたまえ」

「……!あ、ええ、はい」



何者なのかわからない人物に疑問符を浮かべながら、すごすごと警部たちと向かい合う形で座る。



「えっと、隣の方は……」



とりあえず名前だけでも聞いておこうと尋ねれば、"ああ!"と思い出したように警部が教えてくれた。



「松本管理官の後任の黒田管理官だ。10年ほど警察病院の方で入院されていたが、つい最近復帰なさったんだ」



なんと管理官だったとは……!警部より上のお偉いさんだ。でも10年間も入院だなんて不慮の事故だったんだろうか。そんなに長期間だったのならば、私が知らなかったのも納得がいく。そうとわかれば、そんな人がなぜ私に。
私が再び疑問を浮かべていると、男の人──管理官が腰を上げて手を差し出した。



「黒田兵衛という者だ……よろしくな」



鋭い眼光を向けられたような気がして、強ばる手つきで握手を交わした。私はその気迫に圧倒されて、"は、はぃ……"と情けない声が出てしまって。



「し、しかしその管理官がなぜ私に……」

「それは後で話すとしよう……今は目暮、君が先だ」



管理官に話を振られて、さて……と警部が口を開く。そこで私は本来の目的を思い出して、ピシッと姿勢を正した。



「早速だが本題に入るとするか。それで本気なのかね?警察を辞めるというのは」

「……はい。でもよく考えた後の答えです」



私は鞄の中から白い長封筒を抜き出した。その表面には、何分もかけて書いた《退職願》の文字。紙1枚しか入っていないのに、不思議と石でも入っているかのように重く感じられる。
私は封筒に視線を注いだまま、テーブルにスーッと滑らせた。

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設定タグ:名探偵コナン , 黒の組織 , ジン   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年7月29日 16時

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