𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟸𝟺 ページ25
.
「実はパパがその劇団のオーナーと知り合いでね。たまたま初公演のチケットが貰えたのよ!」
……さすがは財閥のお嬢様。金色に縁取られたチケットはいかにも高級そうで、歩美ちゃんたちがキラキラと目を輝かせる。
「すご〜い!いいな〜」
「んじゃあ、それってもしかしてオレたちの分か!?」
「違うわよ……これはあんたたちのじゃないの。それに、この間ホエールウォッチングツアーに連れて行ってあげたばかりでしょー?」
「でもこれって4枚ですよね?園子さんと蘭さん、それに世良さんのだとしたらもう1枚はいったい……」
光彦君が考え込む。確かに毛利さんはあまり興味がなさそうだし。かといって、子どもたちを差し置いてコナンくんが来る可能性も低そう。
「あぁ、そのことなら心配ないわ……だってその事もあってポアロに立ち寄ったんだから!」
園子ちゃんが私に1歩近づく。そして、私の手にチケットを渡した。
「Aさんですよ!1ヶ月後になっちゃいますけど、予定が空いてたら一緒にどうですか?」
「え……!?え、わ、私!?」
予想外の名前につい声が裏返る。こんなチケットを貰えるほどの特別なことでもしただろうか。驚き固まる私をよそに、園子ちゃんは話を続けた。
「昨日、蘭から聞いたんです。Aさんがこの眼鏡のガキンチョの命を救ったって……」
"それで感銘を受けちゃって"と。
いつの間にあの出来事が広まってたんだと蘭ちゃんの方を見れば、彼女は顔の前で手を合わせていた。
「すみません!勝手に言っちゃって」
「う、ううん、それは気にしないで。でも、命を救ったなんてちょっと大袈裟じゃ……」
私は瓦礫に当たりそうになってたのを助けただけ。しかも反射的に体が動いただけなのだ。"いやいやそんなことで……"と、断ろうとすれば当事者のコナンくんが首を振った。
「ボクもあそこで助けてもらえなかったら、きっと大怪我だったと思うよ!だから、Aさんにお礼としてぜひ行って欲しいな〜」
珍しく屈託のない笑顔を浮かべる彼。
そう言われてしまっては、断ることなんて出来なかった。それにそんなに有名なショーならぜひ見てみたい。普段、中々テレビ以外でそういうのは見ないしいい機会だ。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……一応、帰ったら予定を確認してみるね」
私がお誘いを引き受けると、"楽しみにしてます〜!"と園子ちゃんは嬉しそうに手を叩いた。
438人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年7月29日 16時