𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟿 ページ20
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つまり赤井さんは、Aさんがオレたちと同じ立ち位置にいると考えているのだろう。組織に加担する側ではなく、壊滅させる側だと。
「………それより大丈夫なのか。降谷君も随分と大変なことになっているらしいが」
「うん、とんだ災難だよ。まさかグラッパに気づかれちゃうなんて。今は組織から離れてポアロも休んで公安に従事しているみたいだけど……玲奈さんも離れてるんでしょ?」
「ああ。キールも任務と称して姿を消してもらった。以前、2人は裏切り者のレッテルを貼られてしまったこともあるしな」
グラッパ……ラムの3番目の側近だったあの男。
安室さんが組織に潜入していた事が、奴以外にバレてしまった理由はすぐにわかった。すでに事切れた奴が付けていたネームプレートに小型監視カメラが付いていたからだ。これが誰に監視されていたのかは言わずもがな。つまり、奴の音声は筒抜けだったのだ。
つい昨日の出来事を思い返していると、オレはそこでピタリと思考を止めた。
「………ねえ、赤井さん。確認なんだけど、グラッパってラムの側近だったよね?」
「あぁ、そうだ。恐らく組織に見限られて消されたところだろうが」
赤井さんに確認をして、再び思考を再開させる。そしてあの言葉を1文字ずつ思い出して、心拍が一気に上がった。
まさか……嘘、だろ?
頭が真っ白になりそうなくらいの驚くべき事実に、オレは気づいてしまったのだ。さっきのAさんの事実をも上回るくらいの。"どうしたんだボウヤ"と赤井さんが問いかける声なんて、全く耳に入ってこなかった。
「今、大変なことに気づいたよ……奴はボクたちに教えてたんだ。正確にはボクじゃないけど……」
"何だと?何に気づいたんだ"と赤井さんが改めて問いただす。尋常じゃないオレを見て、大きな事だと気づいたんだろう。
「グラッパが死ぬ間際にAさんに言ってたんだ……!"ボクの上役がキミのことを覚えてる"って」
何故今まで気づかなかったんだ。奴はオレたちにラムとAさんに繋がりがあったのを示唆していたんじゃないか。まさに身の毛がよだつ思いだ。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年7月29日 16時