𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟼 ページ17
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「ホー……これはこれは、珍しく客人がいらしてたんですね」
振り返ってみればそこにいたのは1人の男の人。
両手にミトンをはめて、手にしている寸胴鍋からは時折いい匂いが漂っている。そのピンクベージュの髪色と眼鏡が独特の雰囲気を醸し出していた。
「あー！昴さんだ」
「す、昴さん……？」
元気に呼ぶコナンくんとは反対に、哀ちゃんはさっきの落ち着いた雰囲気とは打って変わってややジト目に。
「あら何の用？博士なら奥の部屋で作業してるわよ」
"全く、本当に運が良いんだか悪いんだか……"と哀ちゃんが腰に手を当てる。険悪な雰囲気というわけではないけど、この男の人と哀ちゃんには何か事情があるみたい。
「今の話、まさか立ち聞きしてたんじゃないでしょうね」
「そんなまさか……僕はただ、クリームシチューのお裾分けに来ただけですよ。以前、君に野菜が煮込まれてないと指摘されてしまったので……そのリベンジにといった所です」
「……え、え〜と、哀ちゃん。この方は？」
私が2人の様子を見ながら哀ちゃんに尋ねると、男の人が私に気づいたようでこちらを向いた。
「あ……すみません、申し遅れました。隣人の沖矢昴といいます」
「い、いえいえ、こちらこそ。初めまして。AAという者です」
男の人──沖矢さんに軽く会釈をされて挨拶を交わす。沖矢さんは私をまじまじと見た後、糸目の瞳を更に細めた。
「Aさん、ですね。もしやあのポアロの店員の方でしょうか」
「え……！ま、まぁそうですけど……なんで知ってるんですか？確かお店に来たことないですよね？」
「いえ、ここによく遊びに来る子どもたちが話していたんですよ。それに、君には色々と興味があるので……」
沖矢さんの声色が若干低くなる。
急に見据えられているような感じがして、ギクリと体が強ばった。よく彼の顔を見れば、眼鏡のフレーム越しに薄らと覗く深緑の瞳。その目の下には隈があって……
あれ、この人どこかで……
「あの……勘違いだったら申し訳ないんですけど、どこかで会ったことありませんか？」
「……まさか。僕はただのしがない大学院生ですよ」
「そ、そうですか。すみません」
どうやら私の気の所為だったみたい。よくよく考えればこんなミステリアスな青年、1度あったら忘れないと思う。
さっきの強い視線も気の所為ということにして、不思議な人だな〜と思いながら壁に掛けてあった時計に目をやった時。
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作者名：匿名希望
| 作成日時：2023年7月29日 16時
