清純の追憶･前編《名探偵コナン》 (ページ10)

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𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟿 ページ10

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そんな不安を抱えた私を差し置いて、"だがやっぱり……"と彼が続けた。

「やっぱり今日の1番は、俺の名前がわかったってとこだろ」

「……あ、そっか。さっき言いかけてたよね」

私は最初に彼が言おうとしていたのを思い出した。確かに私もとても聞きたいし知りたい。なんせ、初めて会ったときからずっとニックネーム呼びだったのだから。

どんな名前なのかと私が尋ねると、一拍置いて彼が口にした。

「……陣」

「じん？」

私が聞き返すと、彼──もとい陣くんはコクリと頷いた。

「黒澤陣……これが俺の本名なんだと。あの連中が教えてくれた」

そう言いながら、彼はご丁寧に地面に漢字で書いてくれた。

陣くん……か

初めて聞いた名前だったけど、なぜか彼にしっくりくる。まるで元からその名前だったかのような。
"素敵な名前だね！"と私が言うと、彼はふいっと横を向いた。

しかしここで、私はふと1つの疑問が浮かんだ。

「で、でも陣くん。ここを出るのは18歳になってからって先生が……」

「……いや、先生も前以てこの事を知っていたらしい」

"今日のやつとも顔見知りだったようだしな"と続けて。
それは初耳だ。私の知っている限りでは、先生がそんな事を話したことはない。やっぱり陣くんは特別なのだろうか。今日の話を聞けば、親戚が結構すごい人みたいだったらしいし……

「じゃあ、あと4年しかいられないんだね……」

私と陣くんは2歳差だから、彼は今10歳。あと4年経てば彼とはさよならだ。かなり突然、そして近くに迫ったお別れに胸の奥がジーンとする。私の表情が自分で思っているよりも悲しいものだったらしく"そんな顔すんじゃねぇ"と彼に言われた。

「前に言っただろ？暇つぶし程度なら会えるかもなって」

正直、その言葉にはっきりとした期待は持てなかった。それでも彼の未来を捻じ曲げることなんて出来ないので、今から忘れられないような思い出を作っていけば、別れたって寂しくはならないと思い込むことにした。

陣くんがいなくなっちゃう日までが、もっと楽しいものになりますように！

幼い私の小さな願い事。不思議と、これは絶対に叶うだろうという期待が持てたのだった。