𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟺𝟾 ページ49
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男は自分が言い出したこともあるからか、ゆっくりと重い口を開いた。
「……数週間前、俺はとある組織に雇われたんだ。名も知らねぇ黒ずくめの野郎にな」
黒、ずくめ……!?
その単語に、ドクンと強い衝撃のようなものを感じた。
まさか……まさかこの男はあの組織について何か知っているのだろうか。
「……もしかしてその組織、こう呼ばれていたりしませんか?"黒ずくめの組織"って」
"黒ずくめの組織"。この言葉を口にすると男は目に恐怖の色を浮かべて、ドンッと机を激しく叩いた。思うところがあったらしい。
「なっ…なんでそれをお前が!まさか…まさかお前、あの組織の……!」
「ち、違います、誤解なさらないで下さい!たまたま名前を聞いたことがあっただけです」
私が慌てて訂正すると"マジで殺されるかと思ったぜ……"と、男が冷や汗をかく。この反応からするに、この男がいた組織はきっと陣と同じところだろう。
それから、ガサガサと男はズボンのポケットを漁ると、6枚の人物写真を出して机に広げた。
私はその写真の人物すべてに見覚えがあった。先日、何者かに殺されたと言われている男女の写真。今回殺された有名歌手に、そのファンであろう女性の写真もある。これに共通するのは、どれも連続殺人の被害者ということ。
「元々はパチで金を使い果たしちまってよ……
そん時に、黒ずくめのやつが俺に話しかけてきたんだ。コイツらを始末してくれたら100万くれてやるって。でも……も、もしお縄になったりでもしたら殺すって言われてよ!」
"だからこのままだと殺されちまうんだ"と身体を震わせる。
そうか、だからさっきから男は殺されると怯えていたのか。でもこの男が組織に関係していたのなら、何か知っているかもしれない。組織の情報や秘密を。
「警察署に引き渡すまで、あなたの身柄は守ります。だから……だから、あなたが知ってる組織の情報を教えてもらえませんか」
「……俺は組織について全く知らねーよ!ヤツらが互いに呼び合ってた名前ぐらいしかな」
「いや、それでいいんです!その名前だけでも大きな情報なので」
謎に包まれた組織にとって少しの情報は大きな情報になる。グッとペンを握る私の手が強くなった。
男は、身柄を守るという言葉に納得したらしく、うーんと捻り出すように頭を傾けると、思い出したように話し始めた。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時