𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟺𝟽 ページ48
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さて。男をパトカーに乗せたはいいものの、警察署までの道にはあの事件現場があり、マスコミがたくさん来ていて通れそうになかった。有名歌手が殺害されたこともあり、はやくも報道陣やカメラがたくさん置かれている。
残念ながら、警察署にいま行くのは厳しそう。
仕方なく巡査部長に連絡を入れれば、マスコミや報道陣がいなくなるまで交番で話を聞こうと提案された。
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しかし、そのまま交番に連れてきた男はどこか態度がおかしかった。
キョロキョロと周りを見たり、怯えたような素振りを見せたり。とにかく落ち着きがなかった。
「………まず、初めに質問させてください。あなたはあの連続殺人犯なんですか?」
「……」
「では、質問を変えます。あなたの本名を教えてもらえますか?」
「……」
何を聞いても、男の口は固く閉ざされたまま。男は私の質問が聞こえていないかのように、ひたすら俯いて何かに怯えていた。
これ以上聞いても恐らく答えないだろうから、どうするべきか巡査部長に助言を貰おうと、私は踵を返そうとした。
その時だった。
「……ま、待ってくれ!こ、このままじゃ、俺は……俺はアイツらに殺されちまうんだ!!」
急に男が大声をあげたのは。
アイツら……?
「その話、詳しくお聞かせ願えますか」
これはきっと何かある。普通ではない何かが。
私はそう直感し、再び椅子に腰掛けて男に向き直ると手帳を開いてペンを手にした。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時