検索窓
今日:79 hit、昨日:126 hit、合計:70,057 hit

𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟺 ページ5

.



その日を境に、私たちはよく一緒にいるようになった。


彼の名前はくろさわくんと言うらしい。
名札の黒澤という文字は、まだ4歳の私には読めなかったけど。私も名前を教えようとすると、胸についている名札を見たのか"AAっていうんだろ"と先に言われた。


すごい……私の名前、漢字も入ってるのに


博学な彼におもわず関心しながら、私はふとあることに気づいた。



「くろさわくん、おなまえないの?」



名札にも《黒澤》とだけしか書かれてない彼は、先生からも黒澤くんとだけしか呼ばれていなかった。多分、名前が書いてないのは彼だけ。苗字で呼ばれているのも彼だけだ。



「んなもんねーよ。おれが知りたいくらいだ」



満更でもないというその様子は、たいして苗字呼びを気にしていないのだろう。それかもう慣れてしまっているのか。


苗字だけしかないんだ……ニックネームで呼べたらいいんだけどな


私はその場でう〜んと頭を悩ませた。
かつて、先生がニックネームをつけたら友だちともっと仲良くなれると言っていたのだ。もう私たちは数日ほど一緒にいるというのに、未だ距離がある。きっと彼が人を寄せ付けない雰囲気を纏っているからかもしれない。なんとなくそんなオーラを感じるのだ。
そして私は、考えに考え浮かんだ名前を口にした。



「そっかぁ、じゃあ……"さわくん"だね」



捻り出したニックネームを伝えると、彼はなんでそうなるんだよと不服そうにした。



「だって"くろくん"じゃキレイな髪の色と合わないし…」



こうしてる今だって、室内に差し込む光に照らされてキラキラと輝く彼のシルバーブロンド。今更だけど、きっと彼には異国の血が入ってるんだと思う。



「………それにね、ずっと前に先生が言ってたんだよ。友だちと仲良くなるにはニックネームをつけるのがいいって」



"わたしたち、友だちでしょ?"と続けて彼に投げかけた。
私の話に彼は興味がなさそうに耳を傾けていたが、その瞳は微かに見開かれていて。もしかしたら、何か彼に響くものがあったのかもしれない。



「フン、勝手によんでろ」



"くだらねー"と言って彼は横を向いてしまった。

長めの髪からチラッと見えた口元が、少し緩んで見えたのは私の気のせいだったのだろうか。この日は、ほんのちょっと彼と距離が縮まったような気がした。

𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟻→←𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (193 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
917人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 黒の組織 , ジン   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。