𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹𝟾 ページ39
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彼女の言う通り、このままいけばあと2ヶ月で卒業。10ヶ月の学校生活がついに終わりをむかえるのだ。
私は唐突にある疑問が浮かんで、彼女に尋ねた。
「ねぇ、どうして警察になろうと思ったの?」
警察学校で何度も聞かれるこの言葉。実際に私も何回も教官に尋ねられた。
ところがそれを聞いた途端、彼女の顔が一瞬曇った。まるで聞いてはいけないことを聞いてしまったみたいで。
「……父の仇をとるためよ。私の父はね、私が小さい頃に殺されたの。私たちと同じで警察官だったの」
少ししてからそう告げた彼女は、悲愴な面持ちだった。それでもその瞳には憎悪の感情がこもっている。知らなかった。まさか彼女にそんな過去があったなんて。
「あ……なんか、ごめんなさい。聞いちゃって……」
衝撃的な事実に申し訳なくてそう言えば"いいのよ気にしないで"と話を続けた。
「あの日は、父の誕生日だったのよ。突然、インターホンが鳴って父が玄関を開ければ、ズドンと1発撃たれたわ。私は母と物陰に隠れて難を逃れたけど……」
"でも覚えてるわ……"と、1呼吸置いて彼女が口を開いた。
「あの、黒ずくめのことはね」
物陰から見えたのは確かに黒装束の奴だった、と。
黒、ずくめ……
ぽっと私の頭に彼の姿が浮かんだ。そういえば、陣がいる組織のカラーはまさに黒だったはず。しかも、あの彼をあそこまで冷酷非道な人間に仕立て上げたくらいだ。殺人だって当たり前のように手を染めている危険な組織。
でもまさか、そんな。
「……父はどこかの組織に潜入していたんですって」
しかし、彼がいる組織ではないはずだという私の願いは、その言葉で打ち砕かれてしまった。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時