𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹𝟼 ページ37
.
それから1週間後……
17、18、19……
心の中でカウントしながら、私は引き金を引く。
次の瞬間、そのカウントに合わせてバンバンバンと3発の銃弾が的に向かって発射された。
私の目の前の的に空いてある穴は中心の1つのみ。つまり、私は今のところ全弾ど真ん中を的中させている。
これでラスト……20!
最後の1発に、全神経を集中させて引き金に手をかける。
パンッ
乾いた銃声がして的を見れば、銃弾はど真ん中を貫通していた。
一瞬辺りが静まり返って、教官が手を叩きながら私に向かってきた。それに続いて、周りからも盛大な拍手が。その光景になんだか偉業を成し遂げたような気分になって、うっすらと頬を染めてしまう。
「すごいな、A!最初の試射で満点は、お前で2人目だ!」
"感心したよ"と教官が続ける。あの教官が、こんなに興奮気味になるなんて珍しい。どうやら、私は本当に偉業を成し遂げてしまったようだ。
「そ、そうなんですか!まさかそんなに凄い事だとは……
ところで1人目の方って……」
「それは、お前の7歳上の先輩のことだ!今はもう捜査一課の刑事だがな」
気になって尋ねれば、教官はそう教えてくれた。
私は陣のお陰もあってできたけれど、その方は本当に凄いと思う。今は刑事をしているらしいから、私もここを無事卒業したらその先輩に会えるかもしれない。無事に卒業できたらだが。
「しかし、どこで覚えたんだ?日々の訓練でそれだけの実力がつくとは……」
「え〜と、それは陣……
……あ、いえ!射撃がたまたま得意だっただけです!」
予期せぬ質問に私は焦った。危ない危ない……つい、口走るところだった。彼のことは公言禁止。これは絶対。
やや冷や汗を浮かべた私に教官は深入りせず、"その調子でいけよ!"と喝を入れられた。
❉
そして今日の訓練が終わった後、私は例の彼にメッセージを送った。
今まで教えてくれたことへのお礼。そして、全弾的中できたこと。返信はきっと"そうか"か、"よかったな"のどちらかだろう。たいてい一言の返信は実に彼らしい。
この職業の身である以上、彼とは関係を断つべきか迷ったが結局続けることにした。逆に、何かの手違いで彼から組織について零れるものがあるのではと思ったのだ。
数時間後、予想通りの返信が来て私はおもわず笑みがこぼれた。
917人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時