清純の追憶･前編《名探偵コナン》 (ページ35)

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𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹𝟺 ページ35

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かといって、彼を野放しにしておくというわけではない。彼を更生させるのも私が警察官になった理由の1つ。いつかは取り押さえる日がくる。
しかし私の1番の目的は、陣を変貌させた組織の壊滅。彼を捕らえたところで何か吐くわけがないのは目に見えている。だから、彼の処遇は組織を倒した後だ。

「………あぁ、そうだったな。お前と会うのはあれ以来か」

"恩人"という言葉でことを思い出したのか、彼が煙草に火をつける。ふわりと黒煙のような匂いが辺りに広がり、私は少し顔を顰めた。

……あ。煙草、吸うようになったのね

そんな姿さえ様になっているように見えるのは、彼に特別な感情を抱いているからだろうか。呑気にそんなことを考えていると、急に彼が不敵な笑みを浮かべて黒い塊を私に手渡した。

「拳…銃……？」

ずっしりと重いそれは拳銃だった。それも殺傷能力が高いといわれるベレッタ。

「サツなんだろ？腕前を見てやる」

試すように言うその顔は実に愉快そう。彼は"あれを撃ってみろ"と近くに捨ててあったワインボトルを指さした。
あんな小さなものを撃てとでもいうのか。私はまだ実銃を構えたことすらないというのに。

「あ、いや……射撃訓練は来月に初めてするの。実際に撃つのはまだ先だと思うけど……」

そう私が断ろうとすると、有無を言わさないような視線を向けられた。しかも周囲に音が聞こえないようにとサイレンサーまで付けて。
このままでは帰してもらえないと察した私は、仕方なく慣れない手つきでベレッタを構える。ちなみに、構え方は参考書で軽く見ただけだ。足の位置や持ち方だって詳しくは知らない。そのまま引き金を引けば、発砲音の代わりに衝撃がはしり銃弾はボトルをかするどころか近くにあったゴミ袋の山に着弾した。

「………たまげたな。組織の下っ端よりも下手だとは」

そんな様子を見て、彼は呆れたような表情を1つ。それから私から拳銃を取って片手でバコンと撃った。

「！わぁ、すごい……どこで習ったの？教えて貰いたいくらい……」

つい冗談で言ってしまうくらい、彼の銃さばきは素晴らしいものだった。標的のワインボトルは、綺麗に穴が開いていて、後ろのボトルにまで銃弾が貫通している。きっと常人ではできないだろう。
でも、彼の腕前も組織のためかと思うと少し胸が痛んだ。

「………教えてやっても構わねぇぜ」

割れたワインボトルを見る私に、彼は満更でもなさそうにそう言った。