𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹𝟸 ページ33
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翌朝……
私は門限をしっかり頭に叩き込んで外に出た。
久しぶりの外出許可に、思った通り校内に残っている人はほとんどいない。寮の人たちはやっぱり両親の顔を見に帰省するらしい。
私はというと……出たはいいものの、実のところ行く宛がなかった。申告する際に、買い物に行くと言ったけれどもそんな気はさらさらない。私はただ外に出て空気を吸いたかっただけなのだ。
そのまま辺りをぶらぶらしていると、1つの場所に目がいった。
……あ、コンビニだ
コンビニ──それは、私がまだ施設にいたころのアルバイト先。
優しい店長さんや先輩からいろんなことを教えてもらったっけ。あの頃は施設のことも何も知らなかった純粋な時代だ。
昔の記憶が蘇っておもわず店内に入ると、懐かしい雰囲気を感じた。
いろいろな種類の商品に、たくさんの雑誌。これらは寮に持ち込みが禁止だから手に取ることさえも久しぶりだ。店内に鳴り響く音楽でさえ、今の私にとっては幸福材料の1部。
せっかくなので、私はまかないでよく食べていたおにぎりを買うことにした。
❉
「ありがとうございました〜」
コンビニを後にすると私は近場の公園に向かった。
そして、すぐ側のベンチに腰掛けて買ってきたばかりのおにぎりの袋を開けた。
「んっ……美味しい!」
パクリと口に含めば、やや塩気のあるお米の味が舌を刺激する。学校の食事もまあ美味しいけれど、久しぶりのコンビニの味は懐かしいもの。アルバイトをしていた頃の私は、まさか自分が警察官になるなど、夢にも思っていなかっただろう。人生とはわからないことばかりだ。
おにぎりを口に含みながら、ふと私は昨日教官が言っていたことを思い出した。
そういえば、来月は射撃訓練があるって言ってたよね……
恐らく、私が苦手であろう演習の1つだ。射撃とは言っても、初めは隊列の整列や拳銃の構え方などの基本的なもの。実際に実演するのはまだ先の話。
でも、私は覚えが早い方ではないから、先に参考書で確認する必要があるだろう。
"やることがいっぱいだなぁ…"なんて思いながら、私は残りのおにぎりを頬張った。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時