𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟹𝟶 ページ31
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それから3年後……
満開の桜が咲きほこる明けの春。
とある建物の前に立ち止まる私の頭上に、ヒラヒラと1枚の桜の花びらが舞い降りてきた。
「ここが、警察学校……」
警察学校─それは、警察の教育訓練を行う機関のこと。ここに来ることができるのは、警察官の採用試験に合格した者のみに限られている。
つまり、今からここに入校する私は警察官になれたということ。
汗水垂らして必死に勉強をし、基準も全て満たした私は先日の採用試験に無事合格することができた。合格通知が届いたときは、目が飛び出そうなくらい驚いた。
自分がまさか本当になれたなんて、と。
まだ実感がわかないけど……
でも、ちゃんと頑張らなくちゃ!
そう、これは私の中で大きな1歩。ちゃんとここを卒業して、警視庁へ配属されてそれから──
そう自分の中で固めた決意を思い出し、グッと気を引き締めて私は学校の門をくぐった。
❉
ホーホケキョ
教場の外から鳥のさえずりが聞こえて、私はふと窓の外を見た。
あ、ウグイス……そっか、もうこんな時期なんだ
私がここ、警視庁警察学校に入校してから早くも1ヶ月。
この1ヶ月間は私の想像以上に大変だった。慣れない寮生活に厳しい訓練の数々。覚えるべきものもたくさんあって、勉強漬けの毎日。
そして、鬼のように怖い教官。彼らが私たちのために指導してくれているのは理解しているが、やっぱりまだ慣れない。
今だって、ほんの一瞬外を見ただけだったのに……
「おい、A!よそ見するな!」
「は、はぃ、すみません!」
稲妻のような鬼塚教官の怒声が教場に響く。私はその声の大きさに驚いて、おもわず声が裏返ってしまった。
一瞬だけだったというのに見られていたらしい。いったい、教官はいくつ目がついているんだろうか。
鬼塚教官は、私の方を一睨みすると再び講義の話に戻った。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時