𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟸𝟷 ページ22
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少し気まずい空気が流れて、私は壁に目を逸らした。
あっ……！
そして驚いた。目線の先にあった時計の時刻は、とっくに就寝時間を回っていたから。
「大変、もうこんな時間！」
早く部屋に戻らなきゃ、と恐る恐る部屋の扉を開ける。
……嘘、先生来てる！
ところが、すでに先生の巡回が始まっていた。
私の部屋は反対側で、今からここを出れば先生たちと遭遇するのは確実。そして私は色々と言われて怒られてしまうだろう。
先生が眠りにつくのは0時だから、あと2時間もある。それまで陣くんの部屋にいるしかないのか。でも、彼も寝てしまうし……
「……今日、ここで寝るか」
焦っている私に、衝撃的な言葉が降りかかる。
「えっ」
至って冷静な彼の言葉は、私の思考を停止させるのに十分だった。予想外の展開とはまさにこの事だろうか。
そして彼の顔を見て私は更に驚くことになる。
「それに……最後、だろ」
そう言った彼の頬が、少し色づいていたから。
❉
「って………狭いね、すごく」
なんていうことだ。正直に言えば、私はもうちょっとこうドキドキした展開を期待していたのだ。ちょっと前に見た恋愛小説みたいに。
ところがそんな考えは浅はかなもので、今の私は寝返りもうてないくらいにすしずめ状態。1つのベッドに2人が入るのはさすがに狭かった。成人用だったとしても、彼は背が高いので尚のこと。
「………人の部屋につべこべ言うんじゃねぇ」
"まぁ、この部屋とも今日でおさらばだけどな"と彼が言う。
こんな近くで声が聞こえて、私は顔から火が出そうだ。本来ならば、彼にお別れを言って大人しく帰るはずだったのに。
「わ、私が起きたときには、もういないんだよね」
「あぁ……だが、お前が早朝まで起きてるんなら話は別だが」
やや挑発気味に彼に言われてムッとした。
布団に入ってしまえばすぐ夢の中の私に、朝まで起きていられる力は無い。彼は、私が以前話したこの話を覚えていたのだ。
でも、この時の私はどういうわけかその挑発に乗ってしまった。彼を最後まで見送りたい、という気持ちも半分あったかもしれない。
ところが時間が経つにつれて睡魔が私を襲う。私はそれに抗うように、起きろ起きろと必死に自分に言い聞かせる。
だめ…！まだ、起きて…な…きゃ……
しかし、そんな思いに反して私の瞼はだんだん重くなっていく一方で。
───数分後、ついに私は眠りについてしまった。
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作者名：匿名希望
| 作成日時：2023年6月11日 11時
