清純の追憶･前編《名探偵コナン》 (ページ3)

今日:63 hit、昨日:126 hit、合計:70,041 hit

𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟸 ページ3

.

「おい、それ貸せよ！」

限られた時間の自由時間。
今日はあいにくの雨で外では遊べなさそう。だから室内で絵でも描こうかと準備をしていた。

……そしたら今みたいな状況になった。

相手は3歳年上の7歳で、私が逆らえるはずもなく白色の色鉛筆は彼の手に渡ってしまった。

きょうはもう描けそうにないな

小さくため息をついて仕方なくお絵描きセットを片付ける。
この後は本でも読もうかなと思っていると、コロコロ…と隣から1本の白色の色鉛筆が転がってきた。
そして、私が手に取って転がってきたほうをみると、1人の男の子とパチッと目が合った。

…………！

"きれい"

その子にはまさにその言葉がお似合い。部屋の照明に反射してキラキラと光る銀色の髪。そして私に向けられたその瞳は、エメラルド……いや、もっと深い深碧の瞳。
そんな男の子の容姿に、私は思わず見とれてしまっていた。どうして私は、今までこんな子がいた事に気づかなかったんだろう。

……あ！これ渡さなくちゃ

我に返って持っていた色鉛筆を男の子に渡す。すると、彼は逆に私に押し付けてきた。

「……それ使えよ」

"おれは使わねーから"と言いながら。

「えっ、これ使ってもいいの？」

思わず聞き返してしまった。多分、いつも1人ぼっちの私にはこんなこと初めてで。

「ありがとう……！」

ほんのり頬を染めてお礼をすると、彼はフンと鼻で笑った。

❉

彼のおかげで私の絵は無事に完成し、その絵を先生に見せると褒めてくれた。
今度こそお絵描きセットを片付けて、彼に色鉛筆を返そうとすると何か描いているみたいだった。

「ねぇ、あなたはなに描いてるの」

私の声にびっくりしたのか、一瞬肩をビクッとさせて彼がこっちを見た。その彼の画用紙に描かれていたのは、スカイブルーの空といくつかの小さな家。

「……外の世界」

じっと見入っていると、ボソッと彼が呟いた。

外の世界……それは私たちにはあまり馴染みがない言葉。たまに皆で門の外に出ることはあっても、それは限られた日の限られた時間。本当の外の世界がどうなっているかなんて知らない。

「いつか……いつかここを出て外の世界を見る。先生は綺麗なところだって言ってたからな」

そう続けて話す眼には輝きがあって。まるで何かに夢中になっているような顔だった。

「わたしも外の世界、いつか見てみたい」

つられて私も言うと彼が少し笑った気がした。