𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟼 ページ17
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昼休みになって、私は彼に言われたように部屋を訪れた。
コンコン
「来たよ、言われた通りに」
私が扉を叩けば、それに反応するかのように中からガタガタとした音が聞こえた。それから一拍置いて"入れ"と彼の声が。
少し緊張しながらドアノブに手をかける。彼の部屋に来ることも、見ることだって初めて。出会ってから数年間、1度も踏み入れたことのない空間だった。
軋む扉の音がして恐る恐る開けて見れば、殺風景な部屋が視界に広がった。壁際にはベッドがあって、その隣には申し訳程度の机が1台。彼の部屋にあったのはたったこれだけ。あまり物を置かない私だって、小さい本棚やクローゼットがあるのに。
彼は見せたいものがあると言っていたけど、私が見渡す限りでは特にこれといって気になるものはなかった。
「ねぇ、私に見せたい物って…………」
「あぁ、今出す。……くれぐれもそれ見て騒ぐんじゃねぇぞ」
床に座った彼が念を押すように言う。なんだろう、そんな私が騒ぐかもしれないものって。
とりあえず私がコクリと頷くと、彼はベッドの下に手を伸ばした。すると、何やら見覚えのある小さな四角い箱が顔を出した。
あれ、この箱どこかで……
反射的に私は今までの記憶を思い起こさせる。1年、2年、3年と遡っていくうちに、パッと頭に電流が走ったような衝撃がした。
あ、これって私が覗き見したときの……!
私の脳裏に浮かんだのは、数年前の彼の面会の様子。確か黒ずくめの人から渡されていた箱だ。中身は分からないけど、確かにこの箱だった。
「1ヶ月後に、俺が向かう組織からの土産もんだ」
彼が蓋に手をかけてゆっくりと開ける。
それに合わせてだんだんと姿を現す中身を見て、私はおもわず口に手を当てた。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時