𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟸 ページ13
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1週間後……
「はい!じゃあみなさん、くれぐれも公園の外には出ないようにするんですよ〜」
先生の声に"は〜い!"と元気な声で返事をする子どもたち。勿論、その中には私も含まれている。
太鼓の音や軽快な音楽が鳴り響いているここは、お祭り会場である公園。提灯に金魚すくい、リンゴ飴にたこ焼き……目に映るほとんどのものが初めて見たものばかりで、私はとても興奮していた。陣くんは相変わらずな表情だったが、物珍しそうに辺りを見渡している。
「……これって食べ物なのかな」
さっそく1つの屋台に目がいった。そこには、雲みたいにふわふわしたものが巻きついた棒がいくつも立っている。
「綿あめだと」
立てかけてあった看板を見て陣くんが言う。気になった私は屋台の人から1つ貰った。綿あめの端を手でちぎって口に運ぶと、ふわふわした物は口に入れた瞬間、すぐにしぼんで溶けてしまった。甘い後味だけが舌に残って、美味しいけど不思議な食べ物だ。
彼にも1口勧めたけど、甘いものはいいと断られた。それよりもこっちに行こうと彼に自然と手を引かれる。
わぁ………!
そこにはたくさんのお菓子の箱が雛壇のように並んでいて、手前の長机には銃が置いてあった。
「何これ……えーと、射的?」
「あぁ、景品にうまく弾を当てて落とす遊びだ」
その射的というのは思っていたよりも難しかった。
試しに銃を構えようとすると、それは重くてバランスが保てない。やっと1発撃てたとしても、弾が景品をかすめるだけで。
「……そんなやり方じゃ撃てねーよ」
"貸せ"と陣くんが私の手から銃を取る。それはやけに自信のありそうな表情で。
「まず脇を締めて本体をしっかり持つ。そして、肩にうまく乗せて固定。最後にそのまま引き金を引けば───」
彼が引き金に左指をかける。
次の瞬間、パンッと軽い音がしてお菓子の景品がカラカラと床に落ちた。
「すごい、ちゃんと落ちた……!」
感動する私に、彼はやや得意げな顔をして私に景品を渡す。
なぜかコツを知っている彼の言う通りにすると、私も小さな景品を撃ち落とすことが出来た。
その後も少し射的をやったが、彼の腕前は屋台の人も驚いてしまうぐらいだった。
「すごいね、陣くん!お店の人もびっくりしてたよ」
手にいっぱいの景品を抱えながら屋台を後にする。
次はどこに行こうかと歩いていると、私たちは1つの場所に足を止めた。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時