𝙵𝚒𝚕𝚎.𝟷𝟶 ページ11
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その日から、月に1度の頻度で陣くんは面会をするようになった。
私は彼と会っている人を見たことなんてなくて、無性にその人物が気になっていた。いったいどんな人なんだろう。優しい人かな、カッコイイ人かな、なんて勝手に想像を膨らませていた。1度だけ応接室まで行こうとしたことがあるけど、そのときは先生に止められてしまった。
「黒澤くん、時間だよー」
今日は例の面会の日だったらしく、先生が陣くんを呼ぶ。私と一緒にいた彼は返事をした後、私に何を言うこともなくさっさと歩いて行ってしまった。
先生に来てはいけないと言われていたけど、やっぱり気になる。そんな今の私の好奇心を止めるすべなんて何もなかった。
ちょっとぐらいいいかな……
先生がいなくなったタイミングを見計らって、教室をこっそり抜け出し外に出る。そして、玄関横の応接室に足を進めた。忍び足でそこに着くと、私は背伸びをして部屋の小窓を覗いた。恐らくこの窓は死角になっていて、中から私の姿は見えないはず。
ウーンと無理やり首を伸ばすと、中の様子が少しだけ見えた。
わぁ……みんな真っ黒な人たちだ
まず私の目に入ったのは、ソファに座って話を聞いてる陣くんと先生。
そして、向かいには全身黒ずくめの3人の男の人。彼らは帽子やサングラスをつけていて、表情が全く見えない。そして陣くんは、その男の人たちから小さめの四角い箱を渡されていた。
何の話をしているかなんて勿論わからなかったけれど、普通じゃない彼の表情からはかなり大事な話だと言うことが読み取れる。
やがて背伸びをしていた足がプルプルと震えて、私は地面に両足を着いた。それと同時に部屋から席を立つ音がしたので、私は見つかる前に教室に戻ろうと体の向きを変えた。
その時だった、私が気づいたのは。
自分のすぐ後ろに人がいたということを。
「やはり気になりますか……お嬢さん」
私が振り返った先にいたのは黒い帽子をかぶった男の人だった。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月11日 11時