◆月に飛び込んだイカロス ページ3
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暗闇は果てしなく続いている。
そこに呆然と立った私は、その暗闇を睨むことしかできずにいた。
しかし、睨むだけではこの世界は変わらない。
なら、どうしたものかと一歩踏み出す。
ガラガラ、そんな音はしなかったが、私が立っていた部分が崩れ始めた。
それにバランスを崩しながら、 また暗闇を睨みつけた。
「ほら、早く手を取れや」
ぬっ、と暗闇から手が出てくる。
声とともに差し出されたそれに驚いて、一瞬戸惑う。
誰だっけ？聞いたことがある気がする。
思い出せない。ああ、思い出せないなあ。
ふわり、浮遊感。
そこで初めて恐怖を覚えて、慌ててその手を掴もうとするが時すでに遅し、奈落へと落ちて堕ちてしまった。
いや、奈落じゃない。
暗闇の奥から眩い光が照り始める。
まるで太陽のような光。
私もいつの日にか読んだ古書のイカロスの様に太陽に溶けて燃えてしまうのではないか、そんな思考が脳を掠めた。
そしてそれに馬鹿馬鹿しく私なら太陽じゃなくて月を目指すのに、なんて先程の恐怖なんか忘れて考えているうちに光の中に落とされた。
「……最悪」
目が覚めて第一声がこれとか本当に最悪な朝だな。
眠い目を擦り、欠伸。寝返りを打ってまた欠伸。
夢見が悪い日の朝は、起きるのも大変だ。
ぐだぐだとだらけきった日にしてしまわないように早いうちに、布団をベッドから蹴り落とした。
「うっわ、寒っ」
そして後悔する。布団恋しい。
春先の朝はまだ寒い。てか寒すぎる。
でも、いつまでもベッドの上にいるわけにはいかないので、起き上がると寒さに震えながら朝の準備を始める。
朝ごはんを食べ、いつもの日課を終わらせるとすぐに自室に引きこもった。そして分厚い本を机の上に置き、ノートを準備する。
「試験まであと1週間かあ」
まだ来ないで欲しい、と祈っても現実は着々とこちらへやってくる。
数時間机に齧り付いたのち、漠然とした不安と緊張から今まで何回読み返したか分からない募集要項を取り出し、読み直す。
こんなことしても意味はないと分かっているけど、ついつい読み返してしまう。
「…あと少ししたら私も軍人になるのかな」
まあ、受かればの話だけど。
「…………＿＿」
ふと小さく呟いた言葉はぼんやりと世界に溶けていった。
◆"明日"にはまた初めましてだね→←◆復讐者たちに"明日''はない
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