犬系ヒモ男は同居人 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:5,097 hit

1 ページ1

・

『なあおねーさん、俺の事養ってや』

・

こんな漫画みたいなこと

私が言われるなんて誰が想像できただろう

・

いつもの会社帰り、いつもの帰路…

変わらない日常を送っていたはずなのに

そんな平凡な日常は

私のマンション前にしゃがむ男によって

いとも簡単に崩された

・

見るからに綺麗な顔立ちのその男は

長いまつ毛を上下させて目を開いてから

私のことを捉えて

ふわっと微笑んだと思えば

冒頭の文を言ったのだから

私はびっくりして声も出なかった

・

『おねーさん、おねーさん？？』

『なあ、聞いとるー？？』

・

綺麗な手を私の顔の前でブンブンと振って

アホずらしとるってケラケラ笑う

そもそもこんな東京の中心地で

なぜこの人は関西弁なのだろうか

しかも、コテコテ

・

「………私、養えるほどお金ないんですけど、」

『俺ここで野垂れ死にしてもいいの？』

・

やっと出た声も、彼の黒くて綺麗な目に

吸い込まれそうになって

この拒否できない雰囲気に

意思の弱い私は素直にこくりと頷いて

家に入れてしまうのだから、つくづくアホだ。

・

『おねーさん名前何？』

「えっと、Aです」

『おけおけ、俺のことはきょーへいって呼んで』

「きょ、へいくん」

・

くんなんて付けへんでええのにって

ちょっと頬を膨らますのですら

様になるほど綺麗な顔に

彼を重ねてしまって、なんだか少し嫌気がさす

とりあえず座ってっていう前に

勝手にソファに座るから

もういいや、と半ば自暴自棄になりながらも

お風呂を洗う準備を始めた。

・