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「わ、」
突然現れたサングラスをかけた背の高い男性に、私は少しだけ驚いた。
そんな私の様子を見て、巴さんはクスッと笑い、カウンターの上のグラスを手で遊ばせながら言った。
「んもう、グウェルちゃんったら、存在感無さすぎ」
「それは失礼致しました。」
グウェルちゃん、と呼ばれた男性は丁寧にそう述べながら、私に向き直る。
そして私をサングラスの向こう側からよく観察をするように眺め、納得したように小さく「ああ、」と声を漏らしたあと、ニコッと優しく笑い、言った。
「はじめまして。グウェル・オス・ガールと申します。あなたがA殿ですね。」
私はもう、この世界では有名人のようであった。
私が小さく頷くと、グウェルさんは嬉しそうに笑い「それではA殿、早速お聞きしたいことがあるのですが」とカウンターから出てきて、私の横に座った。
「ちょっとグウェルちゃーん?ア・タ・シ・も!いるんですけど!」
グウェルさんに放置されていたのが癪に障ったのか、巴さんが机を細い指でトントンと鳴らし、アピールをする。
そんな巴さんに目もくれず、グウェルさんはただ私の横で丁寧に何かを話し続けていた。
そんなグウェルさんに苦笑しながら、私はとあることに気がつく。
「グウェルさん、耳が、尖ってる、」
そんな私の発言に、話し続けていたグウェルさんの口は止まり「ああ、これですか」と、まるでどうでもいい事のような口ぶりで言う。
「私はエルフなので、もちろん耳は尖っていますね」
そんなことより、とまた話を元に戻されたので、リアクションをしている場合ではなかったが、どうやらグウェルさんは、サングラスをかけた、エルフ、のようだった。
──人ではない存在。
ここにきてたくさん目にしてきたが、未だに慣れることが出来ない。
本当に、存在していたんだな、と思いながらふと、私の手がグウェルさんの耳へ伸びかけた、その時。
「うぃ〜〜〜〜、お疲れ様ですぅ〜〜〜」
元気よく入口が開いた。
「あら、湊ちゃん、今日は早いのね。5分遅刻よ」
「不破殿、見てください、この子が例の」
2人が一斉に話し始めた入口に立っている男性、どうやら名前は不破湊、というらしい。
不破湊さんは軽やかな足取りで、慣れたようにグウェルさんの横に座ると、グウェルさんの向こう側から顔をひょこっと覗かせた。
とても整った顔立ちをしていて、お店の雰囲気と噛み合ってまるで、ホストをやっている方みたいだった。
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作者名:WAJ | 作成日時:2021年4月9日 1時