検索窓
今日:1 hit、昨日:12 hit、合計:23,589 hit

51 ページ2

「わ、」

突然現れたサングラスをかけた背の高い男性に、私は少しだけ驚いた。

そんな私の様子を見て、巴さんはクスッと笑い、カウンターの上のグラスを手で遊ばせながら言った。

「んもう、グウェルちゃんったら、存在感無さすぎ」

「それは失礼致しました。」

グウェルちゃん、と呼ばれた男性は丁寧にそう述べながら、私に向き直る。

そして私をサングラスの向こう側からよく観察をするように眺め、納得したように小さく「ああ、」と声を漏らしたあと、ニコッと優しく笑い、言った。

「はじめまして。グウェル・オス・ガールと申します。あなたがA殿ですね。」

私はもう、この世界では有名人のようであった。

私が小さく頷くと、グウェルさんは嬉しそうに笑い「それではA殿、早速お聞きしたいことがあるのですが」とカウンターから出てきて、私の横に座った。

「ちょっとグウェルちゃーん?ア・タ・シ・も!いるんですけど!」

グウェルさんに放置されていたのが癪に障ったのか、巴さんが机を細い指でトントンと鳴らし、アピールをする。

そんな巴さんに目もくれず、グウェルさんはただ私の横で丁寧に何かを話し続けていた。

そんなグウェルさんに苦笑しながら、私はとあることに気がつく。

「グウェルさん、耳が、尖ってる、」

そんな私の発言に、話し続けていたグウェルさんの口は止まり「ああ、これですか」と、まるでどうでもいい事のような口ぶりで言う。

「私はエルフなので、もちろん耳は尖っていますね」

そんなことより、とまた話を元に戻されたので、リアクションをしている場合ではなかったが、どうやらグウェルさんは、サングラスをかけた、エルフ、のようだった。

──人ではない存在。

ここにきてたくさん目にしてきたが、未だに慣れることが出来ない。

本当に、存在していたんだな、と思いながらふと、私の手がグウェルさんの耳へ伸びかけた、その時。

「うぃ〜〜〜〜、お疲れ様ですぅ〜〜〜」

元気よく入口が開いた。

「あら、湊ちゃん、今日は早いのね。5分遅刻よ」

「不破殿、見てください、この子が例の」

2人が一斉に話し始めた入口に立っている男性、どうやら名前は不破湊、というらしい。

不破湊さんは軽やかな足取りで、慣れたようにグウェルさんの横に座ると、グウェルさんの向こう側から顔をひょこっと覗かせた。

とても整った顔立ちをしていて、お店の雰囲気と噛み合ってまるで、ホストをやっている方みたいだった。

52→←50



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
239人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:WAJ | 作成日時:2021年4月9日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。