絶望は優雅を生む 5 ページ9
「お前に頼みがある」
あの男性に会ってから数ヶ月。
父が私に頼みごとをしてきた。
「家の金が足りんのだ。助けてくれ」
私は親に頼られるのが嬉しくて、快く返事をしていた。最早これが、違法であるかなんて考えることはしなかった。
父は仕事をやめた。母は以前よりも金の使いが荒くなった。けれども、お前のおかげだと、みんなが喜んでくれた。
頼られればそれでいい。【私】を見てくれるのならば、もうそれ以上は求めない。
だから、私は異能力を使い続けた。私が異能力を使えば、みんなが幸せになれると考えて。でも幸せはそう長くは続かなかった。
夜中に物音がして、暗闇の中、目を開けると誰かが私に馬乗りになっていた。驚いて声をあげようとしたが、口に誰かの手があてがわれる。
「声を出さないでくださいね、お嬢様」
―――殺されたくなければ。
そう耳元で話す人物の声に聞き覚えがあった。この家の使用人だ。信頼を置いていた使用人が、なぜ。
「わからないですか?貴方を使えば、大金持ちになれる。そうすれば、こんな仕事もしなくてすむんだよ!!」
「……」
「だからお嬢様―――」
「何をしているのです」
「お母様……!!」
黙ったまま使用人の言葉を聞いていると、母が部屋へ入ってきた。助かった。これで母が誰かを呼んできてくれれば、私は助かる。
ところが、母は使用人が私に馬乗りになっているのにも関わらず、いたって普通に使用人と話始めた。
「夫と残りの使用人の方はどうなったの?」
「旦那様の方は先刻始末致しました。残りの使用人のほうも、既に始末しております」
「始末……?」
二人の云っている意味がわからなかった。…いや、わかりたくなかっただけかもしれない。母とこの使用人の望みは何だろう。
「ええ、始末です。私はこの人と結ばれたかったの」
「……つまり、浮気ってこと?」
「浮気ではないわ。お前が生まれてから私たちの関係は冷めていたもの」
母は冷たい声を私にあびせる。私が生まれた時から、この家は地獄だったのだ。私利私欲のためだけに生き、己のことしか考えない汚い家。
「知らなかったのはお前だけ」
気持ち悪い。
「お前はまだ利用価値があるわ。お前は金だけを造っていればいいの」
気持ち悪い。この家も、両親も、人間関係も、全部全部。
「そのほうが、お前も私も幸せでしょう?」
―――こんな家なくなってしまえばいい。
私はそう【望んで】しまっていた。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時