双つの黒 4 ページ45
「ほう」
「私は反対した。非合法組織との共同戦線など、社の指針に反する。…だがそれはマフィアに何度も撃たれ、斬られ、拐かされた者から成された提案だ。言葉の重みが違う」
「故に」と社長は続け、「組織の長として、耳を傾けざるを得なかった」と言う。そんな社長に対し、森は冗談目かしたように「お互い苦労の絶えん立場ですな」と笑った。
「結論を云う。同盟はならずとも一時的な停戦を申し入れたい」
「………興味深い提案だ」
「理由を云う。まず第一に―――」
「T・シェリングを読まれた事は?」
突然、話の腰を折り、森が次々と戦争戦略論の研究者たちの名前を言う。その名前に聞き覚えのない社長は太宰さんに教わり、孫子なら読むと答えた。
「国家戦争と我々の様な非合法組織の戦争には共通点があります」
森は語りだす。協定違反をしても罰する者がいない。何せ元々は敵対組織だ。お互いに裏切らないとは言い切れない。
「あるとすれば完全な協調だが……」
「それも有り得ない」 「それも無理でしょう」
完全な協調なんて無理だ。
私と太宰さんの声が重なる
すると森は面白そうに目を細め、こちらを一瞥をした。
「……その通り。マフィアは面子と恩讐の組織。部下には探偵社に面子を潰された者も多いからねぇ」
「私の部下も何度も殺されかけているが?」
「だが死んではいない。マフィアとして恥ずべき限りだ」
「……ふむ、ではこうするのは如何だ?」
お互いに一歩もひけをとらない。交渉決裂かと思ったその時、社長がある提案をだす。
「今此処で凡ての過去を清算する」
そういった社長の目は本気だった。途端に変わる雰囲気。なにかを察知したポートマフィアの最前線にいた部下たちは己の武器を構えた。
しかし動く間もなく武器はすっぱりと切られてしまう。いつの間にか社長は、刀を森の喉笛にあて、反対に森は手術刃を社長の頸動脈に当てていた。
「……刀は棄てた筈では?弧剣士『銀狼』――福沢殿」
「手術刃で人を殺す不敬は相変わらずだな――森医師」
「相変わらずの幼女趣味か?」
「相変わらず猫と喋っているので?」
二人はもしかして知り合いなのだろうか。まるでお互い昔のことを知っているようだった。
しかし、社長の姿はまるで雪が溶けるように消えてしまう。細雪の限界がきたようだ。
「立体映像の異能か…。楽しい会議でした。続きは孰れ、戦場で」
「―――――今夜、探偵社は詛いの異能者“Q”の奪還に動く」
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時