頭は間違うことはあっても ページ34
『この戦争に政府機関を引きずり込む』
この間そう言った太宰さんは、知り合いの特務課の職員に会いに行き、敦くんは捕虜であるポートマフィアの幹部―――尾崎紅葉に会いに行った。
一方、私は今、横浜の街をぶらぶらと歩いていた。一応、国木田さんには見回りだと伝えてある。
あれから敦くんとはどこかぎくしゃくした空気になってしまい、まともに会話ができていない。あの時の雰囲気を思い出してため息が出た。
「はぁ……どうしよう……」
「何かお悩みかな?お嬢さん」
ぽつりと独り言を溢すと、誰かから声をかけられたので、そちらを向くと異国風の青年がいた。この人は以前見たことがある。マフィアと探偵社が衝突寸前の時に、荷物がくると言った人だ。
「なっ…!?組合……!?」
「おっと。騒がないで。君もこんな所で戦いたくはないだろう?」
とん、と背中を何かで押される感覚。恐る恐るみると、それはナイフの柄の部分だった。道行く人々が、動かない私たちをうっとおしそうに見ていた。どうやらまわりからは死角のようだ。
「……なにが目的?」
「ついてくればわかるよ」
こんな所で戦えば、一般人を巻き込むことになる。そうなってしまえば、大災害だ。
私が大人しく頷くと、青年は私の腕を掴み、人気のない海の近くへと連れていく。到着したとたんに、青年は私を壁へ押し付けた。翡翠色の瞳が私を見下ろす。背中にあったナイフが、今度は首元へ移動していた。
「悪いねお嬢さん。君には何の恨みもないんだけど……ウチのボスがお呼びでね。君が必要なんだ」
「……どうして?私は組合にとっては邪魔な存在の一つでしょ」
「それは僕にもわからない。ただ、君には拒否権はないと思うけど」
そういって彼はもう片方の手で携帯を取り出した。はい、といって見せられたのは、フィッツジェラルドさんに捕らえられたぼろぼろの敦くんの写真。その写真をみた途端、無意識に言葉が出ていた。もはや冷静さなんて残っていなかった。
「敦くんに何をしたッ!?」
「君がくればわかるさ」
頑なに私にきてほしいようだ。しばらく無言で睨み付けたが、青年はただ笑うのみ。
「組合は金で寄せ集められた組織だ。当然、拷問に特化した人物もいるだろう。もし君が断れば、この少年が拷問を受けるかもしれない。その先は―――――言わなくてもわかるね?」
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時