うつくしき人は寂として石像の如く 9 ページ2
「小僧ォ!A!!何処だっ!!」
「国木田さん……!?」
「もう嗅ぎつけたか探偵社。纏めて膾切りに……」
その時、海のほうから国木田さんの叫び声が聞こえた。武装探偵社が助けに来てくれたようだ。芥川が国木田さんに気をとられている隙に、鏡花ちゃんが芥川の拘束から逃れた。そして私たちに逃げるように促す。
「今の内に逃げて。この船は取引場所へは行かない」
「ならば何処へ行く」
「どん底」
直後、船の後方から爆発音が聞こえた。爆発の振動で足元が揺れ、私と敦くんは拘束から逃れることができた。
「真逆…武器庫の爆弾を…!自決するつもりか!」
「鏡花ちゃん…!!」
「君――」
「逃げて!」
「A!敦!!沈むぞ、早く来い!」
国木田さんと鏡花ちゃんの声に念を押されて、戸惑う敦くんの手を掴んで国木田さんのいる方へと走る。敦くんのAちゃん、と焦る声が聞こえたが、無視だ。
「お前ら、此処だ!爆発の所為でこれ以上近付けん!跳べ!」
甲板につくと、国木田さんが私たちに気がついたようで叫んだ。敦くんは国木田さんの顔を見ると、まだ迷っているような顔をした。鏡花ちゃんのことが気がかりなのだろう。
そんな彼のことを、私は後ろから押す。
「先に探偵社に戻ってて、敦くん」
「なっ……!?」
敦くんが無事にボートに着地したのを見届ける。敦くんは驚いた顔でこちらを見上げた。なんで、どうして、と言いたげな顔だ。
本来なら次は私だ。
しかし、一向に乗らない私に、国木田さんは痺れを切らし、怒号をあげる。
「A!!何をしている阿呆が!船が沈むぞ!」
「ごめんなさい、国木田さん。残業手当、出しておいてください」
笑顔を最後に残して、私は国木田さんたちに背を向けてきた道を戻った。後ろから敦くんと国木田さんか私の名前を呼んだが、振り返らない。
元の場所へ戻ると、芥川が鏡花ちゃんを黒獸で殺そうとしているところだった。すかさず鏡花ちゃんと芥川の間に入る。芥川は私が戻ってくるのを予測していたのか、口角をあげた。
―――――呉々も無茶だけはするな。
先日太宰さんに言われたことを思い出した。
これは無茶じゃない。……と思う。
帰ったら太宰さんに怒られるだろうか。今度こそ、ただじゃ済まないかもしれない。
…………帰れるのかな。
ううん、帰りたい。探偵社に。
「私が相手だよ、芥川」
太宰さん。
「――矢張戻ってきたか、小娘」
私、少しだけ闘うのが怖いです。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時