絶望は優雅を生む 3 ページ7
その日を境に両親は私に優しくなった。もうお稽古もやらなくていいという。外にも自由に出ていいと。その代わり、自分の異能力についてよく学べと言った。
ようやく私は自由になれたのだ!
私は自由を求めるあまり、両親の言うことを聞いた。両親が何を考えているのかなんて知らずに。
「おっと、これは失礼」
ある日、私は外に出掛けていたら、不注意で包帯を巻いた男性とぶつかってしまった。こちらこそごめんなさい、と謝り、立ち去ろうとすると腕を掴まれる。そのままその男性は私の片手を自分の両手で優しく包んだ。
「あの……?」
「なんと気品に溢れていて可愛らしい。ああ、私はなんて無礼なことを……!可愛らしいご令嬢よ、何かお詫びさせていただけないだろうか」
「えっ」
突然息継ぎすることなく告げられたその言葉に困惑する。今まであまり人と関わらなかったので、どう対応していいのか分からない。そんな私の反応をみて、面白かったのかその男性は笑う。何だか失礼な人だ。むきになって私はそっぽを向きながらその男に返事をした。
「別に、大丈夫です。お気になさらずに」
「いやいやそれでは私の気がすまない」
なかなか引かない男だ。そこは素直に聞いてほしい。
もうらちがあかないと思い、無理やり逃げ出そうとしている時、男性があっ、と何か思い付いたように声をあげた。
「ならばあの店でどうだろう。君くらいの子ならば、ああいう物は好きだろう?」
「……」
あの店、といって男が指を指したのは小さなワゴン車だった。クレープ屋と大きな字でかかれたその車は、本当に店なのだろうか。家にいたときは見たこともない。私は興味半分でその男の言葉に承諾した。
好きな物を選んでいいと言われ、悩んだが申し訳ないので一番安いものにした。貴方は食べないの?と尋ねると、男性は私はいい、と断られた。
薄い生地に生クリームや苺が乗っている。これがクレープというものなのだろうか。恐る恐る一口食べてみると、口のなかに苺の甘酸っぱさと生クリームの甘さが混ざりあって舌に広がる。
「あまい」
「お気に召したようでよかったよ」
「………貴方、変な人ね。普通、知らない人に食べ物なんて買ってあげないわ」
「そうかい?私は君のほうが変だと思うけどな」
男性はそこで私をみた。男性と私の視線が交わる。
「君のようなお嬢様が、護衛もつけずに観光だなんて」
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時