双つの黒 7 ページ48
「そ、そんなことないですよ〜!!素敵な帽子だなって思ってたんです!!」
「…………そうかよ」
「ちょっと中也。私の助手に話しかけないでくれる?汚い言葉が移る」
「手前も大概だろうが!!!」
帽子が素敵なのは本心だ。私が誉めると、矢張どこか嬉しそうに中原中也は頬を掻いた。
すると太宰さんは、しっしっと犬を追い払うようにしながら、中原中也を嫌そうな顔でみた。
「はぁ…全く……ここ数年で最低の一日だよ……」
「何で俺がこんな奴らと……」
お互いに皮肉を云いながらなんとか小屋の扉の前にたどり着いた。そしていざ扉を開けようとしたとき、ぴたりと二人の動きが止まった。
どうしたんだろう、と思い後ろから様子を伺い、納得する。二人が同時にドアノブを触ろうとしていたのだ。
「俺の隣を歩くんじゃねえ」
「中也が私の隣に来たんじゃあないか」
「いいか?仕事じゃなきゃ一秒で手前を細切れにしてる。判ったら二米以上離れろ」
「あ、そう。お好きに」
この二人、実は仲良しなのではないだろうか。
中原中也は距離をとった太宰さんに舌打ちを一つして扉を開けた。それから一度振り返り、一応太宰さんと一緒に距離をとっていた私に「手前はいいんだよ」という。
「えっと……良いんですか…?一応、あなたの敵ですよ私」
「別に手前みてぇな奴に殺られるほど柔じゃねぇぞ俺は」
「はぁ?ハゲ隠しの帽子褒められただけでいい気にならないでくれる?Aは私の隣だよ」
「ハゲ隠しじゃねぇっつの」
私を挟んで言い争いするのはやめてほしい。いちいち皮肉を言い合う彼らに苦笑してしまう。
小屋の中にQはいなかった。代わりにあったのは、地下へ続く階段だけ。
未だに言い争いする二人を置いて、私が階段を降りるとそれに気がついた二人が降りてきた。しばらく無言が続いたが、ふと中原中也が切り出す。
「おい太宰、“ペトリュス”って知ってるか」
「目玉が飛び出るほど高価い葡萄酒」
「手前が組織から消えた夜、俺はあれの八九年ものを開けて祝った。そんくらい手前にはうんざりしてたんだ」
「それはおめでとう。そう云えば私もあの日、中也の車に爆弾を仕掛けたなあ」
「あれ手前かっ!!」
中原中也が勢いよく振り返った。
小学生の悪戯か、と心の中でツッコむ。いや、悪戯のレベル的には小学生以上だが。
それに、中原中也を相手にしている太宰さんはなんだかいきいきしているように見える。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時