絶望は優雅を生む ページ5
私は傲慢な人が嫌いだ。自分の価値観を他人に押し付け、まるで自分が正しいとでもいうように振る舞う人が。
私の父と母は、そんな人たちだった。
「なぜこんなこともできないの…!?」
「………ごめんなさい、お母様」
ばしりと鈍い音が鳴った直後、私の頬が熱をもった。母にぶたれたのだ。
―――これで619回目。
母が私をぶつのは珍しいことではなかった。母は自分の思い通りにならなかったり、私が礼儀の作法を間違えると、ヒステリックを起こして私をぶつのだ。一方父は、そんな私に興味を示すことはなく、口をつぐんでいつも傍観するだけだった。
「お前は名家に生まれてきたのよ、その自覚を持ちなさい」
私は他の子とは違うと、母はよく私に言い聞かせた。最初は理由がわからなくて、しつこく聞いたら母にぶたれた。だから聞くことをやめ、自分なりに考えてみた。そしてある結論にたどり着いた。
私は不幸な家に生まれてしまったのだと。
そもそも私は他の子と遊んだことがないし、自由に外に出たことがない。私が外に連れていってもらえるのは、大体食事を外でするときだけ。店の窓から見える街を行く人々を眺めるのが好きだった。
母と手を繋ぎながら歩く子供、家の車よりも小さいがどこか魅力のある車、古ぼけながらも味のある街灯、すべてが新鮮だった。
うらやましかった。自由に生きる彼らが。家に縛られない彼らが。
そんな普通な暮らしに魅了される私を、両親は嫌った。
「なぜお前が女なのだ」
父は男の子が欲しかったらしい。
女は当主にはなれない。それが家の掟だった。
だから私が十歳のときに、さっさと顔も知らぬ歳上の許嫁を勝手に決められた。しかし、私の家には、結婚をするのは二十歳になってから、という伝統があった為、対面をすることもなくそのまま時が進んだ。もうその頃には反発するのも面倒だった。
絶望は優雅を生む 2→←うつくしき人は寂として石像の如く 11
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時