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台風の直後か、爆撃機が通過したあとの焼け野原みたいな、渺茫(びょうぼう)たる景色......。
スバルは放心状態で、座席に体重を預けて手のひらで顔を覆っている。
いつも陽気で騒がしい彼だからこそ、そんな姿は異様に見えた。
孤独感の、かたまりのよう。
彼らは大急ぎでこの場に到着し、観客席の最前列に座ったスバルに駆け寄る。
こちらに気づいているのかいないのか、彼は反応せずにただ呆然としていた。
真に比べて少し余裕のある北斗が、意を決したように、スバルに呼びかける。
「明星」
北斗にとっても、こんなスバルを見るのは初めてなのかもしれない。
「こんな暗いところで、ひとりで何をしている？」
顔を寄せて、北斗は気遣(きづ)いながら優しく問うた。
「朝霧先輩が、心配していたぞ。どうした、何があったんだ？
お前らしくないぞ、そんなふうに落ち込んでいるのは......。どうもドリフェスを観戦していたらしいが、そこで何かショックなものでも見たのか？」
幼い子供か孫にでも語りかけるように、北斗が柔らかく尋(たず)ねている。
「相談してくれ、仲間だろう。おまえが笑っていないと、俺たちもどうしたらいいかわからない。
おまえは、俺たちを照らす一等星なんだ」
「......うう」
真心をこめた北斗の言葉に、スバルが反応する。
顔を覆っていた手のひらをどけると、その奥からぐしゃぐしゃの表情が露出(ろしゅつ)した。
「うわぁん、ホッケ〜！」
「むう、抱きつくな鬱陶(うっとう)しい。ほんとにどうした明星、いつもとはちがう方向で様子がおかしいぞ？」
北斗にむしゃぶりついて泣きじゃくるスバルを、真が何だかちょっと羨(うるや)ましそうに眺めている。
「う〜ん。今日のドリフェスで、何かがあったんだよね。『S2』だっけ____公式ドリフェスは映像が学院の生徒限定サイトにUPされてるから、それを確認してみよっか？」
弱気なところがある真も、窮地(きゅうち)には頼りになる。
「えぇっと......。慌てて飛び出してきたから、スマホしかもってないんだよね。画面ちっちゃくて、見づらかったらごめんね？」
抱き合う(？)彼らの正面に回って、制服のポケットからスマートフォンを取り出すと提示する。
「やっぱり、ドリフェスの当日はサイトが重くなるなぁ......。読み込みが長〜い」
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年2月10日 16時
