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「遊木真くん」
「は、はいぃっ!?」
カチコチな真くんが、おばけや妖怪に声をかけられたように肩を跳ねさせた。
「あなたは全然ダメ」
「全然ダメ!? そ、そりゃあ明星くんや氷鷹くんに比べたら歌も踊りも下手だけど!」
「自覚してるならいいわ。でも、そう卑下(ひげ)しなくてもいいわよ?」
率直に突き刺さった刃。
さすがにショックだったのか涙目になる真。
「あなたは光るものを持っているわ。でも、それを自ら放り捨てている」
探りを、いれているのだろうか。
問いかけるような言葉を並べている。
「北斗くんのように、遠慮しているわけでもない。怖がっている、自分を出すのを躊躇している......そんな感じかしら。
何を、そんなに怯えているの?」
真は返事をせずに、痛みを堪(こら)えるみたいに顔をしかめた。
そんな表情が嫌いなのか、Aは眉を下げた。
「安心しなさい。あなたの仲間は、みんな良い子よ。打てば響く、共に並んで歩いてくれるはずよ。
迷惑をかけないよう、一歩遅れてついていく____そんな調子では、あなたは永遠に追い付けないわ」
さすが『プロデューサー』と言うべきだろうか、他者を理解し的確な助言を与えている。
心の深いところまで把握し、傷つけないよう、壊れないよう気を遣いながらよ、強く育てようとしてくれる。
「待たせるの、優しい仲間を。それは罪悪てすらあるわよ、足りない自覚があるのなら、死にもの狂いで努力なさい」
壊れた人形のように項垂れて突っ立った真の頬に、Aは手を添える。
瞳の遥か底の底に、悲しみの色を浮かべて。
「そして胸を張って、あなたの仲間の横に並びなさい。そのために必要な才能は、輝きの萌芽(ほうが)は、すでにあなたの中にあるわ」
無機質とすら思える人間味のない態度になった真の双眸(そうぼう)が、人間性を主張するように、迷うように動いている。
その視線が、北斗を、スバルを捉える。
Aの手が彼の頬から離れる。
「それはかつて、あなたを傷付けたものかもしれない。それがあなたの、たったひとつの武器なのよ。
それを、最大限に活かすといいわ」
真は勇気を奮い起こすように拳をぎゅっと握りこんで、Aを見上げる。
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、 - この作品の続編ですが、最新作はオリジナルフラグが外れておりません。違反行為ですのでちゃんと外して下さいね (2018年8月9日 18時) (レス) id: 93bb7a0f46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2017年10月29日 17時