思い馳せる姫君 (ページ20)

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「まっ、わかってること、ひとつだけあるけどね」

　スバルが言った。

「おまえはひとりじゃないってこと。言っただろ？俺たちは『Trickstar』だ！」

　スバルはウインクをしながら左拳を北斗につきだした。

　北斗は驚いたようにスバルを見、真と真緒は互いに顔を見合わして微笑む。

「......」

　少女は俯いたまま、何も発しない。

　そんな彼女の表情はわからない。

「いつか、夜空の星に手が届くぐらいに、でっかく成長できればいいじゃん。みんなで、ね？」

　スバルはキラキラした笑顔で、両手を広げて夢を語る。

「明星...。そうだな...俺が言ったんだったな。

　『俺たちは一蓮托生(いちれんたくしょう)の仲間だ』って」

　北斗は目を細めて、少し口元に笑みを浮かべて告げる。

「そうだよ！みんなで『打倒生徒会！』だよ！」

「ウッキ～言うね～☆」

「おい、一応俺も生徒会だから！」

　意見が一致し、これからやるべきことを決めたTrickstar。

「先輩！」

　真が少女のいたところを向き呼びかける......が、そこに少女の姿はなかった。

「あれ...?」

「結局、名前聞くの忘れてたねサリ～！」

「なんで俺なんだよ！？」

　ワイワイガヤガヤと騒ぐTrickstarを、とある校舎の一室から見る人影があった。

「まったく...。晃牙(わんこ)といい、こやつらといい...」

　寝癖なのかゆるく波打った闇色の髪、血のごとき深紅の瞳の少年は、窓から差し込む日光に当たるまいと、影になっているところから覗いていた。

「若いもんは元気でいいのう♪」

　のほほんとしたおじいちゃん口調が特徴の少年である。

　すると、ガチャと少年のいる部屋の扉が開き、誰かが入ってきた。

「おぬしと会うのは久しぶりじゃのう...A」

「......零(れい)」

　先ほどまでTrickstarと一緒にいた、プロデュース科の少女だった。

　少女の名をA、少年の名を零、というらしい。