肆拾玖 ページ7
「いっ!!!」
痛かったようで、頭を抱えて寝台に蹲る我妻。
俺はそれを視界の端に捉えながら、丸椅子に腰掛け猪頭を見る。
「で?嘴平はどんな感じだ?」
「ゴメンネヨワクッテ。」
挫折を知らなかった山の王の成れの果てだ。
喉掴まれて潰されてるにも関わらず、己で叫んでしまっているから救いようがない。
「嘴平は今、自分が
そう聞けば猪頭が、コクリ、と縦に動いた。
視界の端では、未だに我妻が痛がっている。
「なら、強くなればいい話じゃねーか。
お館様にも同期とは仲良くしろ、と言われている為、一応俺は仲良くなる為の努力中である。
俺の言葉が届いたのかは分からないが、視線を我妻へと戻す。
「翔閃、昨日からなんか冷たくない?前は俺が騒ごうが喚こうが、問答無用で口移しで薬飲ませてたのに……なんで?」
蹲ったままそう聞いてくる我妻に、隠しておくのは優しさじゃないな、と気付かされる。
「あーいうことすんなって、泣かれて怒られた。」
「…………女の子?」
「いや、立派な男。」
「もしかして、翔閃「皆まで言うなよ、炭治郎。」
「翔閃の馬鹿野郎……」
涙まじりの弱々しい罵声に、ごめんな、と謝りそうになったが聞こえなかったフリをする。
「なんか言ったか?」
「羨ましいって言ったんだよ!自慢すんじゃねぇよ!!なんなんだ!顔がいいからって!!バーカバーカ!!」
幼稚な罵声を吐き捨てたかと思えば、やけ酒ならぬやけ薬。
飲まねばならぬ量を我妻は、一気に煽った。
「にっっっが!!!!!」
おえぇ、と吐きそうになりながら、目に涙を溜めていた。
「頑張れば飲めるじゃねーか。」
たんぽぽのような頭を撫でてやれば、子供扱いするな!、と騒ぎ出した。
お前に涙は似合わねーから、そうやって騒いでてくれ。
───
「炭治郎…っ。」
「善逸、言わなくても俺には分かってるよ。……泣きなよ、余計に辛くなると思うし。」
風柱補佐が帰ったあとのこと。
たんぽぽ頭が下を向き、ぼろぼろ布団に涙を落として泣いているのを竈門が慰めている姿があった。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年5月4日 21時