閑話 ページ4
あれから一週間。
俺は、あれから一度も帰らず宇髄邸にやっかいになっていた。
ずぶ濡れで宇髄邸に来た日以来、俺は泣きはしなかった。
鴉が持ってくる任務、担当地区の見廻りはこなしている。
合同任務で一緒になった下級隊士が、俺が鬼を斬ってる時まるで何かの八つ当たりしているようだったと話しているのが耳に入った。
そうかもしれねェが、俺は意識的にその事を考えることを放棄していた。
｢不死川、お前寝れてるか？｣
｢あァ？……休んではいるから大丈夫だァ。｣
休んではいる。眠れはしないが。
それならいいが倒れるなよ、と宇髄は釘を差してきた。
どうやら宇髄はこれから任務らしい。
やることが無い俺は、与えられた部屋でボーっとしていた。
｢風柱様、お客様です。｣
誰彼構わず当たりそうな俺に、客だァ？
物好きな奴は誰だ、と俺は襖を開けた。
そこには、会いたくても会いたくない奴がいた。
｢実弥……｣
｢……帰れェ。｣
見たくなくて、俺は背を向けた。
拒絶なんかしたくねェのに。
｢実弥、話聞いてくだせー。｣
｢……俺は、話すことはねェ。聞きたくもねェ。｣
｢それでも、聞いてくだせー。｣
アイツが部屋に入って襖を閉めたようだ。
一週間ぶりに、二人きり。
｢実弥……ごめん。俺が悪かった。蝶屋敷での手伝い、薬飲むの嫌がる奴に飲ませるってやつだったんだ。薬嫌いの同期に飲んでもらわねーとって思って、湯のみで飲ませても零れるだろうからって俺……口移しで飲ませた。｣
｢聞きたくねェって言ってるだろォ！？｣
視界が歪む中、俺はアイツを振り返った。
顔を見た途端、腹立たしさが戻ってきて俺は殴ってた。
避けるなんて簡単なはずなのに、アイツは俺に殴られてた。
｢俺の事、好きだって言ったよなァ！？｣
｢うん……っ。｣
｢月が綺麗だって言ってただろォ！！｣
｢うん……っ。｣
｢あれはァ……っ！嘘っ、だったのかよォ！！｣
何発も、殴った。
殴りたくねェのに、殴らねェとやってられなくて。
でも、殴れなくなった。視界が歪んで、アイツも歪んで。
なのに怒りは燻ってるから、アイツを拳で叩く。
情けねェ面を見られたくなくて、アイツの肩口に顔を埋める。
｢ごめん……っ。｣
抱きしめられた。壊れ物を扱う様な、優しさで。
泣きたくねェのに、涙が止まらねェ。
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年5月4日 21時
