陸拾陸 ページ26
「君はお館様の時の。」
「はい、竈門炭治郎です。」
竈門が我妻と嘴平も紹介した。
背中の木箱に入ってる禰豆子のことも、ちゃんと紹介していた。
「うむ、あの時の鬼だな。お館様がお認めになったこと、今は何も言うまい。」
「安心しろよ、万が一があれば俺が叩き斬ってやるからよ。」
「翔閃、同期とは仲良くとお館様にも言われただろう。」
「さーせんさーせん。」
三人から視線を逸らし、窓の外を見やる。
見ても速すぎる景色に、眉間にシワが寄ったまま。
炎柱が竈門たちに座るよう、促した。
「え、でも翔閃と座ってたんじゃ……」
「あー、いいいい。俺あっち行きますわ。」
「すまない、翔閃。」
「帰ったらずんだ奢りで。」
俺は立ち上がり、通路を挟んで炎柱の席から斜め後ろに背中を向けて座った。
竈門は炎柱の隣へ。
我妻と嘴平が俺の前へ。
「すっげー!主の中、すっげー!」
「割れるだろ!ガラス!」
ムハムハ、と笑いながらガラスを叩く嘴平を我妻が猪頭を掴んで止めさせている。
「少しは落ち着けよ、嘴平。」
うるせー、と内心思いながら子守り状態の我妻に同情した。
炎柱と竈門は何やら話をしているようだが、目の前の猪がうるさく内容までは分からない。
竈門たちの会話に聞き耳を立てていれば、目の前にいるたんぽぽの視線が痛いくらいに刺さってくる。
「……なーんだよ。」
肘掛に肘を乗せて頬杖をついたまま、炎柱の方に顔を向けながら視界の端に映っているたんぽぽに言葉を投げる。
「あいっかわらず色男だなと思ってただけ!」
「ふっ…惚れんなよー。」
「ばっ…かじゃないの!?自意識過剰もいいとこだよねー!」
ふんっ、と顔を逸らしたかと思うと、未だに騒ぐ嘴平を止めようと奮闘し始めた。
「俺の継子になるといい!面倒みてやろう!」
「待ってください!そしてどこを見てるんですか!?」
「まーた、勧誘してるし。流行ってんのか?マジで。」
「炎柱って、変な人だな…」
たんぽぽから零れた音を、あざとく俺の耳が拾った。
「変な人、か……面倒見のいい、良い兄貴なんだけどな。」
「…翔閃、好き、なんだな。炎柱のこと。」
「好きだよ。そりゃ、
「だよね、そういう音、聞こえるから分かるよ。」
その言葉から、耳がいいんだな、と内心呟く。
まるで、どこかの派手柱みたいだ。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年5月4日 21時