伍拾玖 ページ19
｢無限列車に向かますか？｣
｢うむ！だがその前に、車掌の遺体が発見された駅を見分してみよう。｣
｢些細なことでもいいから、情報ほしいっすね。｣
蕎麦屋を出た俺たちは、遺体発見現場となった駅へ向かった。
炎柱の鎹鴉の要と、俺の鴉である碓氷も人の足では入れないような所を中心に見てもらう事になった。
各々見てまわり、改札で再び落ち合う。
｢翔閃、どうだった？｣
｢なーにも。｣
｢異常ナシ！｣
｢同ジク！｣
｢見て回りましたが、変わったところはありませんね。｣
駅の見分が空振りに終わり、次は機関庫っすね、と言おうと俺は口を開いた。
｢鬼なんかいないよっ！｣
｢ん？｣
奥の方から聞こえてきた少女の声に、俺の口からは言おうとしていたものとは違う音を発していた。
三人の視線は、自ずと奥の方へ向けられた。
｢また鬼の話！ダメだよ、頑張ってお弁当売らなきゃいけないんだから。お母さんお腹が大きいし、お父さんは食堂の経営上手くいってないって……｣
｢そんな心配は大人がすればいいの。早朝と夜は、おばあちゃんが一人がやるから。｣
｢おばあちゃんが切り裂き魔に 襲われたらどうするの！？｣
｢あんたの身代わりなら本望だよ。｣
｢おばあちゃん……！｣
聞き耳立てていた訳では無いが、聞こえてしまった会話に俺たちは老婆と少女の下へ足を向けた。
｢やぁ、こんばんは！気持ちのいい月夜ですね！｣
｢俺たちは鬼を探してるんすけど……鬼、見てねーすか？｣
後ろで江頭と鴉二羽が騒いでいるが、知らん。
炎柱を見て、老婆の方が驚いた様な表情を見せた。
｢ご婦人、何かご存知か？｣
炎柱が尋ねたが、二人の間に少女が立ちはだかった。
｢お、鬼！？変なこと言って、な…なんですか！？近づかないで！｣
拒絶を口にするが、少女の体は怖い、と震えていた。
｢危ない！そんなにブルブルしていたら、大切なあんぱんを落としてしまうぞ！｣
｢いや、心配するとこそこかよ……｣
｢来ないでくださいっ！｣
俺のツッコミをかき消して、少女が力いっぱい拒絶すると無意識なのだろうかあんぱんを投げつけてきた。
それは炎柱の顔面に直撃。
直撃したあんぱんを、炎柱はどうするのか俺も江頭も鴉たち、老婆さえも動向を見守った。
手に取ったと思ったら、一口ぱくり。
｢美味い！｣
｢そーっすかそーっすか、美味いっすか……って食うなよ！｣
パシン！、とキレのいい俺のツッコミが炎柱の頭を叩いていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年5月4日 21時
