伍拾漆 ページ17
目の前には蕎麦を食う炎柱。
｢うまい！｣
｢へぇへぇ。｣
やめてくれ、と言ったところでやめることのない食事の感想を、俺は適当に流す。
もはや、慣れである。
｢昨日の女、どーなったんすかね。｣
｢江頭が時期来るだろう。昨夜の女性の安否や容態も分かるはずだ。｣
｢あー、えがしらさん。｣
｢違う、江頭だ。｣
足を組み頬杖つき、待ち時間に無意識に左手の人差し指でトントントントン卓を叩く。
｢うまい！｣
｢それ、何杯目っすか兄貴。｣
｢ん？まだ一杯目だが？｣
｢そーっすか。｣
ガラガラ、と引き戸の開閉の音でそちらを見れば噂をしていた件の江頭がいた。
｢炎柱、と……｣
｢風柱補佐、氷月翔閃です。以後お見知りおきを。｣
姿勢を正して、名乗った俺は江頭へ握手の為に手を差し出した。
｢江頭です。噂はかねがね。｣
握手をしながら、何の噂だよ、と内心思った。
数ヶ月で柱補佐までになった、とかならまだいいが、粗暴で怖い風柱の好い人、などといったものだと向こうに迷惑がかかるってもんだ。
｢炎柱、お食事中失礼します。｣
改めて炎柱に声を掛けた江頭は、炎柱に勧められ俺の隣へと腰掛ける。
｢おやっさん、今と同じの三つくだせー。｣
｢翔閃、なぜ三つも？よもや、お前が食べるのか？｣
｢
｢なるほど、そうだったか。さすがは翔閃だな！｣
｢いや、江頭です。それより、よろしいのですか？｣
名前を訂正してきた江頭に、さーせん、と言いながら、また俺は頬杖をつく。
｢蕎麦は兄貴の奢りなんで、遠慮なく。｣
｢うむ！遠慮することはない！｣
ね？、と江頭を見れば、はぁ…、と頷いた。
蕎麦屋の親父が炎柱の一杯目が入っていた器を取りに、中から出てきた。
｢あんた、気持ちのいい食いっぷりだな。待ってな。｣
嬉しそうに言い、また次のものを作るために奥へと戻っていく。
｢炎柱。昨夜の働き、見事でした。｣
｢いや……鬼は逃走した後だったからな。｣
｢で？負傷したあの女は、どーなりましたか？｣
｢医師が言うには、傷跡も残らないで済む、ということです。｣
それを聞いて、俺も炎柱もどこかホッとしていた。
｢翔閃の処置が早かったからだろうな。｣
｢兄貴の仕事が早かったからっす。｣
｢風柱補佐のおかげでもありますよ。｣
｢氷月でいいっすよ、肩書き
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年5月4日 21時
