閑話 ページ16
目が覚めると俺は布団で寝ていて、アイツはいなかった。
俺の記憶は縁側で、自分とアイツの汗と愛に塗れて悩ましげに眉を寄せて愛してる、と囁くアイツで終わってる。
布団に運んだのも、汗と愛に塗れた俺を綺麗にしたのも、普段広げて着る浴衣の胸元がきっちりしてるのも、すべてアイツがやったことを教えてくれた。
「ここまでやってんなら、見送りくらいさせろってんだァ。」
俺の熱しか持たない布団が、共に床に入ってたしてもアイツが出てから相当時間が経っているのだと嫌でもわかる。
体を起こそうと動けば、腰に走る鈍痛に舌打ちを打っていた。
腹の虫が鳴き、飯ィ、と呟けば、ほらよ、と居るはずのない奴の声がした。
「生きてるか、不死川。」
「…なんでここにいやがる、宇髄ィ!」
俺の視界にひょっこり、顔を出したのは、派手柱だった。
「翔閃に頼まれて来てやったんだ、派手に感謝しやがれ。」
「俺は頼んでねェ……」
「しっかし、翔閃の奴派手に独占欲強いんだな。」
ニヤニヤしながら言うコイツに、俺はその顔やめろ、と拳を振るう。
だが、鈍痛のせいで上手く動けず結局拳はやすやす受け止められた。
「起きれんのか?」
「チッ……起こせ、オラァ。」
悪態つきながら俺は、手を借りて起き上がった。
さすがに慣れてるようで、音柱は自分の片膝を立てて俺の体をもたれさせた。
「ほら、握り飯だ。」
「……お前が?」
「アホかお前、翔閃に決まってるだろうが。」
出る前に用意して、音柱に頼みに行ったのかと思うと、嬉しい反面小っ恥ずかしくてしょうがねェ。
「派手に愛されてんじゃねぇの。」
「うるせェ。」
握り飯を頬張りながら、ニヤニヤしっぱなしの音柱を睨む。
「ニヤニヤすんなよ、気持ち悪ィ。」
「悪ぃ悪ぃ。で?翔閃、一人の任務か?」
「いや……煉獄と一緒だって言ってたぜェ。」
柱級の隊士が二人も出撃となれば、自ずと導き出されるのは上弦の鬼の存在だ。
「生きて帰ってくるだろ、二人ともよ。」
「死んで帰ってきたら、俺が殺してやる。」
「派手に無茶言うよな、お前って。」
苦笑してる音柱を他所に、ごちそうさん、と俺は手を合わせた。
「そういやお前、見廻りは?あるなら、代わってやってもいいぜ?」
「残念だったなァ、それまでには俺も回復してんだよォ。」
額当てのされてない頭を、今の全力でぶっ叩いた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年5月4日 21時