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伍拾陸 ページ14

それから六日が経ち、明日俺は任務の為に現地へ向かう。
今夜は非番で、夕餉も湯浴みも済ませて俺は上裸で縁側に座り涼んでいる。
一緒に入ろうとしたら、風柱に追い出された。


「あーちぃー……」


長い後ろ髪を一つにまとめ、それを適当に団子のように丸め簪を差してとめる。
このまま外を歩くとよく女と間違われる。
胸の膨らみもなく、真っ平らなのにも関わらず。


「女みてェだなァ。」


風呂から上がったらしく、風柱がわざと俺の項を撫で上げてきた。


「お戯れをー。」

「想ってねェだろ、んなことォ。」


ペシン、と肩を叩いた風柱は俺の隣へ腰を下ろした。
俺と同じく、上裸である。


「実弥、目に毒っす。」


生き抜いた証が刻まれている、傷だらけの胸板。
男が見ても普通はそういった感情は抱かないだろうが、俺はそうではない。
隣で惜しげも無く見せられた上裸に、一つ一つ確かめるように俺の指が傷跡をなぞる。


「っ……どうせ、脱がされるからなァ。」

「脱がす楽しみ奪わねーでくだせーよ。」


利き腕よりも自傷する左腕の方が、切り傷が多い。
半身だけ風柱に向けて、左肩の傷跡に唇を寄せる。


「翔閃……っ。」

「んー?」


ツーッ、と舌先で舐めれば、それすらも快に変換されるらしく音にならない声が吐息になって聞こえてくる。
悪戯に吸い付けば、傷跡の中に咲く赤い鬱血痕。
なのに、一つつけただけでは満足いかない俺の独占欲が風柱を押し倒していた。


「痛ェぞ……翔閃。」

「実弥だって、食われる気満々じゃねーですか……」


纏めたはずの髪が、肩をくすぐる。
風柱の手を見れば、そこには俺の簪が握られていた。


「あーあ、何とってんすか。」

「団子頭のお前より、下ろしてるお前の方が俺は好きなだけだァ。」

「……それは、反則ってやつっすよ。」


まっすぐ見つめられて稀少な微笑みで言うから、柄にもなく俺は照れて顔を逸らして左腕で口元を隠した。


「はっ……照れてんのかァ?翔閃くゥん?」


優位に立ったと思ってるのか、風柱の煽りが調子づく。
その証拠に、俺の俺を膝で刺激してくれている。


優しくしようと思ってたのにな……

「あァ?」

「実弥が(わり)ーんすからね、やめろって言われてもやめねーんで……」


俺の中で何かが切れて、縁側だということも忘れて噛み付くように、貪るように接吻をした。
夜は始まったばかりだ。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年5月4日 21時

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