伍拾参 ページ11
五月下旬、俺はお館様に呼び出された。
何かやらかしたか？、と思っていたがどうやらそうではないらしい。
｢呼び出してすまないね、翔閃。｣
｢いえ。お館様におかれましても、ご壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申しあげます。｣
｢ありがとう、翔閃。呼び出したのは、一週間後に出てもらいたい任務があるんだ。｣
｢と、言いますと？｣
赴く場所は無限列車。
報告によると、行方不明者が四十名と多く追加で派遣した隊士たちも消息を絶ったという。
｢上弦の鬼がいるかもしれなくてね、この任務には杏寿郎にも出てもらうよう言ってある。｣
｢お言葉ですが、お館様。その役目、俺でよろしいのでしょうか。柱である煉獄様が出撃なさるのでしたら、俺ではなく風柱の不死川が出るべきかと。｣
上弦がいるかもしれない無限列車に、本来なら行かせたくは無いが私情を抜けば実力は俺より風柱の方が上だと思っていた。
｢翔閃、過小評価はよくないよ。翔閃の実力は実弥を初め、天元やしのぶといった柱から聞き及んでいるからね。その上で私は人選しているんだよ。｣
御館様は優しく笑んで、もちろん杏寿郎も評価していたよ、と言いくわえた。
｢それにね、翔閃。無限列車には、炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助。この四人にも言ってもらおうかと思ってるんだ。｣
｢彼らも、ですか！？｣
｢打診したのはしのぶだけどね。あの子たちは、今よりも強くなると言っていたよ。だからね、翔閃を選んだという理由もあるんだ。｣
竈門が行くかもしれない任務に、風柱では衝突が出来てしまう。
そのせいで連携が取れず、散りゆく命となっては意味が無い。
｢お館様のお考え、よくわかりました。｣
｢行ってくれるね？｣
｢御意。｣
一週間後に、上弦がいるかもしれない無限列車。
常に死と隣り合わせである鬼殺隊員は、遺書を書くよう言われている。
風柱が寝てるかいない時に書こう、と心に決めて俺は産屋敷邸を後にした。
───
帰り道、偶然にも甘味処で炎柱と遭遇した。
｢翔閃！息災か？｣
｢煉獄の兄貴、元気っすよ。兄貴は変わりねーっすか？｣
｢うむ！今も団子を五十本食べたところだ！｣
｢相変わらずっすね。｣
翔閃もどうだ、と言われ俺は言葉に甘えて席へ着いた。
直ぐにずんだを、と思ったが今は無性におはぎが食べたかった。
｢さーせーん！おはぎ十個くだせー！こしあんで！｣
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年5月4日 21時
