肆拾伍 ページ1
「翔閃〜、薬の時間だよ〜!……俺もう嫌なんだけど〜!」
あれから一週間、俺は通いで我妻に薬を飲ませ続けた。
ありがた迷惑な話だが、口移しで。
「いい加減、自分で飲めよ。手足もだいぶ戻ってきてんでし。なー、善逸?」
寝台の傍の丸椅子に腰掛けながら、俺は呆れながら言う。
我妻はまるで餓鬼のように、すぐに駄々を捏ね始める。
「わーった、わーったから!ったく…」
蝶屋敷での手伝い、と割り切り、俺は作業的に我妻に薬を飲ませる。
初めの頃は毎回、俺が迫って押し倒して口移しで飲ませていたが、今では我妻の方から接吻してくる始末。
それを見て直接飲めるだろ、というのだが、口移しがお気に召したようでやらなければ飲まない、とまで言っていた。
「……ぷはっ。」
薬を飲み終え、俺が体を離せば頬を赤らめイヒヒ、とどこか嬉しそうに笑う我妻。
そんな我妻を見ながら、俺は欠伸をする。
ここ最近、眠れていないのだ。
何故かと言うと、邸にいるはずの風柱が居らずガランとしているのだ。
合同任務で一緒になった隊士が怖かったなどと話しているのを聞いて、任務には行っているのかと少し安心はした。
「翔閃、次も飲ませてくれるんだろ?」
「あー……悪ぃ、無理だ。」
「何でだよ!ちゃんと俺に薬飲ませろよ!」
「野暮用かあるんだよ、野暮用が。わがまま言ってねーで、ちゃんと飲めよ?」
ブーブー文句言い出す我妻を、俺はクシャクシャ頭を撫でてから病室を出た。
そのまま俺は、蟲柱を探し始める。
途中、なほちゃんたちに会ったためそれとなく居場所を聞いてみた。
「しのぶ様なら、いつものお部屋にいましたよ?」
「なんか困ってそうでした。」
「というより、悩んでそうでした。」
「あざっす、行ってみるよ。」
三人娘と別れ、俺は言われた部屋へと向かった。
───
「あ、いた。」
「あら、翔閃くん。どうかしましたか?」
三人娘が言っていた部屋を覗くと、案の定そこに蟲柱はいた。
失礼しやす、と断り室内へ足を踏み入れる。
「ん……実弥、知らねーっすか?」
「不死川、さん?彼が、何か?」
「……一週間前から、邸に帰ってこねーんすよ。しのぶ姐さん、付き合い
我妻の前では、無理して調子を合わせてはいたがずっと引っかかっていた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年5月4日 21時