金色の麦畑 ページ23
船はアリスに任せ、一行は海辺の桟橋から内陸へと歩いていた。
桟橋にある船小屋で話を聞くと、次の町までの中間くらいに場所に"ネルセンの宿屋"という宿屋があるという。
一行は、そこを一時の目的地と定め魔物を蹴散らしながら足を進めた。
───
ネルセンの宿屋らしき建物が見えてきた頃には、辺りに小麦畑が広がっていた。
変わってねーのな、と懐かしく呟くゼク越しに、カミュは足を止めて小麦畑を眺めた。
金色の中に一つだけ赫がポツン、と置かれる景色に盗賊は溶けてなくなってしまいそうなそんな切なさに襲われた。
思わず手を伸ばすカミュに、ゼクは声をかける。
「カミュ、遅れてんぞー。小便かー?」
「ちっげぇよ!」
足早に赫に追いつきバシンッ、と腹いせに抜きざまに背中を叩く。
痛がり追いかけてくる赫に、ベーっ、と挑発し青が先頭へと駆け出した。
───
予定より少し早く宿屋に到着し、すぐさまチェックインした一行は翌日まで自由時間とし解散した。
「んで?部屋割りが、なーんでお前となんだ?ゴリアテ。」
「いいじゃない、アタシとでも。むしろ、感謝して欲しいくらいよ。」
「あ゛?」
「カミュちゃんと2人きり、同室だと何かと大変じゃない?」
何が、とかなんの事だ、とかしらばっくれることを考えたが、根回ししての部屋割りだと理解した瞬間そのしらばっくれる事でさえ肯定材料に過ぎないと、ゼクは導き出した。
「アナタ…カミュちゃんのこと、好きなんでしょ?」
「どこでバレたよ…」
「もしかしてって思ったのは、サマディーのサソリちゃんの時よ。アナタ、カミュちゃんやられた時キレたわよね。」
確信を突かれゼクはぐうの音も出せずに、目を閉じその先を待つ。
「それが確信になったのは、ダーハルーネでの救出劇の時ね。単騎で突っ込むって言い出すくらいに、心配で仕方なかったんじゃない?」
「見てなさそうでしっかり見てるの、昔っから変わらねーな。…単騎で突っ込むって言ったのは別にカミュが、って訳じゃねーけどな。……腹立つやり方しやがる、ホメロスに一発かましたかっただけだ。」
本音をホメロスへの怒りに隠して、ゼクは装備を外し軽装になるとベッドへ横になった。
「あら、寝るの?」
「悪いかよ。」
「べっつに〜。」
ちょっと出てくるわ、と言い残し眠りにつくゼクを置いてシルビアはルンタルンタ、と楽しげに部屋を出ていった。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時