シルビア号 ページ18
そんな会話をしながら、カミュは一行の下へと戻ってきた。
だが、一難去ってまた一難という諺があるように勇者捜索に出ていた兵士達がステージへと駆け戻ってきた。
「悪魔の子イレブンとその一味め!よくもホメロス様を!」
ホメロスもその間に立ち上がる。
「……私を倒しても、何も変わらぬ。貴様らは、ここで捕らわれる運命なのだ!」
「誰が捕まるかよ!」
口では強く言ってはいるが、実際背後は海のため背水の陣に一行は置かれていた。
シルビアは何を思ったか、海を見渡し何かを発見したようだった。
「みんな、安心して!もう大丈夫よ!」
振り返ってそう言ったかと思うと、ひとり海へ走っていき飛び込んだ。
さすがの一行も仲間の奇行に、ホメロス達同様呆気に取られていた。
「はっはっは!ここで仲間に逃げられるとはな。イレブンよ、貴様の仲間など所詮はその程度の繋がりだったということ。随分手間を取らされたが、今宵のショーはここでおしまいだ。ここでおとなしく私に捕まるか、海に落ちてサメのエサになるか……今、ここで選ぶがいい!」
「ヤケに饒舌だな?んだよ、勝利の確信を得たってか?」
「これ以上、貴様らにどんな道が残されているというのだ?」
「ホ……ホメロス様!あれを、ご覧くださいっ!」
ひとりの兵が指さす方を見ると、大きな帆船がこちらへ向かってきていた。
その船の船首には、先程海に飛び込んだはずのシルビアが堂々と立っている。
「みんな、おっまたせ〜!!シルビア号のお迎えよん!」
操舵手に指示を出したのか、船は一行がいる波止場へと寄ってきた。
「さぁ、みんな飛び乗って!」
その声を合図に、タイミング良く波止場から船へと飛び移って行く。
だが、一瞬だけベロニカが躊躇を見せた。
「イレブン、カミュ!受け取れ!」
「えっ、いや、ちょっと!?」
ゼクは問答無用でベロニカを船へと投げ入れる。
悲鳴を上げながら飛ばされたベロニカは、先に飛び移っていたイレブン達に受け止められていた。
投げた当の本人は、1番最後に船へ飛び乗った。
兵達が慌てて追いかけて飛び乗ろうとするも、船は無情にも離れていき次々に海に落ちていった。
「じゃーな、ホメロスっ!今宵のショーは、なかなかスリルがあって楽しかったぜ!」
アディオス!、と挨拶を残しホメロスに背を向けた。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時