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「ダメよ!アンタバカなの!?」

「ゼク、僕も反対だよ。たぶん、カミュもそうだと思う。」

「だそうよ?ちなみに、アタシもそれには反対。」

「ゼクさま、カミュさまが心配なのは分かりますが、ご自身も労わってあげてください。」


皆に反対されゼクは、目いっぱい息を吸い込みそれを吐き出した。


「なーに、本気にしてんだよ。ジョークだ、ジョーク。」

「ブラックジョークにも程があるわよ、ゼク。」


隣に並んできたシルビアに、ゼクはジロリ、と睨まれた。
単騎で突っ込もうとしていたことを、どうやらシルビアには悟られていたようだった。
怖ぁ、と呟きゼクはあらぬ方へ視線を投げる。


「そうだわ!北西のゴンドラ乗り場から、ステージの裏手に回れる通路があったはずよ。そこを通ってステージに近づきましょ!」

「シルビア、丁度下にゴンドラがあるよ。ここから飛び降りようよ。」


シルビアとイレブンによって策は立てられ、順に下の通路へ飛び降りていく。
セーニャが飛び降り、残すはベロニカとゼクだけだった。


「先行け。」

「そうするわ。」


そう言うが何をどう頑張っても、ベロニカは欄干を乗り越えられそうに無かった。
ため息ひとつついてから、ゼクはベロニカを子供にするように抱き上げる。


「きゃっ!ちょっと、何よ!」

「ガキは、黙ってろ。突き落とすぞ。」

「ガキじゃないってば!レディーだって、言ってるじゃない!」

「黙れって……勘づかれるだろが。」


そのままゼクはベロニカを欄干に座らせた。
本気で落とされると思っていたのか、ベロニカは少し頬を赤くしてありがとう、と恥ずかしそうに礼を述べた。
おー、と気の抜けた返事をして魔法少女が下に着地するまで辺りを警戒する。
下に着地した音を聞いて、ゼクが欄干に手をかけてもう一度ステージの方を見た。
一瞬だが、囚われの身である盗賊と視線があったように感じ思わず不敵な笑みを見せた。


「待ってな、カミュ…」


そう言ってからゼクは、橋の下の通路へと飛び降りた。
とたん、と着地してすぐにゴンドラへ乗り込んだ。
静かな町に、時折ホメロスの声が響いてきてそれが一行の気持ちを急かすのだった。


───

ステージ裏の通路にたどり着き、音を立てぬように一行はゴンドラから降りると忍び足でステージの死角へと急ぐ。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時

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