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意外な催促に、ゼクの理性が揺れる。
見つめる瞳の奥に、色欲が見えた。
「んな、煽んなよ…」
「触れるだけなんて、ガキでも出来るだろ…」
雨の雫にカミュが目を細める。
流れ落ちる雫を、ゼクは右手の親指で払い除ける。
左手を青の腰へ回し、赫が抱き寄せる。
「腰砕けても知らねーからな…」
「砕け……っ」
カミュの否定の言葉ごとゼクは飲み込む。
空気を求めて開いたカミュの吐息が漏れる。
もったいない、とでも言うかのようにゼクはそれすらも許さない。
堪能するには時間は短いが、今はそうも言ってられぬ為口惜しげにゼクが離れた。
銀糸が2人を結ぶが、無情にも雨粒が許可もなく断ち切った。
ゼクはそのまま、カミュの額に自分のを重ねる。
「……はい、おしまい。」
「チッ…分かった。」
快感を追いかけそうになる雄な自分を、ゼクは理性を総動員させて押さえつけた。
離れてく背中を見つめたまま、燻る欲を持て余す。
「……部屋割り、次は絶対もぎ取るか2人部屋。」
ゼクは雨の中勇者と姫の帰りを待つのであった。
───
結局、勇者達が戻ったのは雨があがった後だった。
それを見つけたのはベロニカで、指差す方へ視線を向ければ2人の無事が確認出来た。
「無事じゃったか、ふたりとも。」
「ロウ様……ご心配をおかけしました。グレイグの襲撃を受けましたが、なんとか逃げ切る事ができました。」
「ちっ……やっぱタンク野郎だったか。」
「グレイグには確かめたい事があったが、それには及ばぬようじゃな……」
ロウが言う。
今のデルカダール王国には、魔物がはびこっている、と。
間違いない、と言い切るほどに確信を得ている言い方だった。
「はるか昔……栄華を誇ったとある王国は、魔物が化けた奸臣によって滅ぼされたという。その魔物の名は……"ウルノーガ"……!!」
「ウル、ノーガ……」
ゼクはその名に、顔を顰めた。
記憶の奥深く、どこかに記したはずだと記憶の引き出しをひたすらに漁る。
「わしらは、長い旅の末やっとその名に辿り着いた。」
はるか昔より暗躍し続ける邪悪の化身で、今のデルカダールを牛耳っているのがその魔物であるらしい。
勇者として生まれ落ちたイレブンは、ウルノーガと戦う宿命にあるという。
だが、名前だけ知っていても未知であることには変わり無い。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時