検索窓
今日:20 hit、昨日:44 hit、合計:3,175 hit

137 ページ4

宙で体勢を変えて、獪岳の頸を斬った善逸はそのまま一緒に落ちていった。


「善逸ーっ!!」


慌てて追うが、俺の足元には床が見えない程の高さがあった。
善逸の命がかかってるから、躊躇うことはしない。
そのまま縁を蹴って、加速させて落ちていく。


「違う、爺ちゃんはそんな人じゃない。これは、俺の型だよ。俺が考えた俺だけの型。この技で、いつかアンタと肩を並べて戦いたかった…」


そう言い終わったタイミングで、やっと俺は善逸を腕の中に抱き込む事が出来た。
頸と胴体が離れ、今も塵と化している獪岳の下に隊服を着た見知らぬ男が寄り添っていた。


「人に与えない者は、いずれ人から何も貰えなくなる。欲しがるばかりの奴は、結局何も持ってないのと同じ。自分でな何も生み出せないから。独りで死ぬのは、惨めだな。」


そう言ったかと思えば、その男は俺の方を見てきた。
着いて来い、と一言言って壁を数度蹴って安定した場所へと向かって行った。
得体の知れない者に指図されるのは嫌だけど、善逸がこのままなのも受け入れられない為仕方なくその後を追った。


───

「君…何者?」


人じゃないのは、俺の耳が教えてくれていた。
けれど、外見は人の形をしている。
着ているのも、隊服だ。


「味方だ、そいつを治療する。」

「とか言って、息の根止めるんじゃないの?」


警戒するでしょ。
鬼特有の音がしてるんだから。
得体が知れないんだから。
味方だという確証を、俺は持っていないんだから。


「鏡月!その人は大丈夫だ!我妻を寝かせろ!」

「村田。」


見知った数人の先輩隊員がやってきて、俺にそう言ってきた。
先輩が言うならそうなのだろう、と思い至って俺はそっと善逸を下ろした。


「俺の大事な人だから。」

「見てれば分かる…俺は愈史郎。珠代様と一緒に、鬼殺隊に手を貸している。」

無惨(ボス)に敵対する(デーモン)なわけね。」

「……日本語喋ってくれ。」


頼まれるが、答えはNO。


「どうだ!?助かりそうか!?顔見知りなんだ、何とかしてくれよ!頼むからな!!」

「うるさい、黙れ村田。味噌っかすの分際で、襲われないようしっかり周りを見てろ。」

「善逸…」


涙が溜まった目元。
罅割れたままの皮膚。
触れただけで壊れてしまいそうで、涙を拭おうと伸ばした指先が止まった。


「懸命な判断だな、触れない方がいい。」


戻っておいで、善逸。
君が帰ってくるのは、俺の隣でしょ。

138→←137´



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
14人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

春月是駒(プロフ) - おいもさん» ありがとうございます! (10月28日 8時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
おいも - おもしろい!頑張ってください (10月27日 18時) (レス) @page10 id: a2ba9c7e56 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年10月19日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。