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宙で体勢を変えて、獪岳の頸を斬った善逸はそのまま一緒に落ちていった。
「善逸ーっ!!」
慌てて追うが、俺の足元には床が見えない程の高さがあった。
善逸の命がかかってるから、躊躇うことはしない。
そのまま縁を蹴って、加速させて落ちていく。
「違う、爺ちゃんはそんな人じゃない。これは、俺の型だよ。俺が考えた俺だけの型。この技で、いつかアンタと肩を並べて戦いたかった…」
そう言い終わったタイミングで、やっと俺は善逸を腕の中に抱き込む事が出来た。
頸と胴体が離れ、今も塵と化している獪岳の下に隊服を着た見知らぬ男が寄り添っていた。
「人に与えない者は、いずれ人から何も貰えなくなる。欲しがるばかりの奴は、結局何も持ってないのと同じ。自分でな何も生み出せないから。独りで死ぬのは、惨めだな。」
そう言ったかと思えば、その男は俺の方を見てきた。
着いて来い、と一言言って壁を数度蹴って安定した場所へと向かって行った。
得体の知れない者に指図されるのは嫌だけど、善逸がこのままなのも受け入れられない為仕方なくその後を追った。
───
「君…何者?」
人じゃないのは、俺の耳が教えてくれていた。
けれど、外見は人の形をしている。
着ているのも、隊服だ。
「味方だ、そいつを治療する。」
「とか言って、息の根止めるんじゃないの?」
警戒するでしょ。
鬼特有の音がしてるんだから。
得体が知れないんだから。
味方だという確証を、俺は持っていないんだから。
「鏡月!その人は大丈夫だ!我妻を寝かせろ!」
「村田。」
見知った数人の先輩隊員がやってきて、俺にそう言ってきた。
先輩が言うならそうなのだろう、と思い至って俺はそっと善逸を下ろした。
「俺の大事な人だから。」
「見てれば分かる…俺は愈史郎。珠代様と一緒に、鬼殺隊に手を貸している。」
「
「……日本語喋ってくれ。」
頼まれるが、答えはNO。
「どうだ!?助かりそうか!?顔見知りなんだ、何とかしてくれよ!頼むからな!!」
「うるさい、黙れ村田。味噌っかすの分際で、襲われないようしっかり周りを見てろ。」
「善逸…」
涙が溜まった目元。
罅割れたままの皮膚。
触れただけで壊れてしまいそうで、涙を拭おうと伸ばした指先が止まった。
「懸命な判断だな、触れない方がいい。」
戻っておいで、善逸。
君が帰ってくるのは、俺の隣でしょ。
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春月是駒(プロフ) - おいもさん» ありがとうございます! (10月28日 8時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
おいも - おもしろい!頑張ってください (10月27日 18時) (レス) @page10 id: a2ba9c7e56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年10月19日 14時